なぜ赤字を放置しているのか
では、Whooshは「失敗」なのか。答えは、何を基準に測るかで変わる。
ジョコ・ウィドド前大統領は、Whooshは渋滞解消を目的とした公共サービスであり、利益は優先事項ではないと主張している。フォーリン・ポリシー誌が伝えた。
実際、インドネシアの公共交通で黒字の路線を探すほうが難しい。ディプロマットによると、ジャカルタMRTは収入の約半分を補助金に頼り、市内バス網のトランスジャカルタも補助なしでは赤字だ。
国営鉄道KAI本体でさえ、2024年の収入22億ドル(約3500億円)のうち2億8500万ドル(約453億円)が補助金である。ならばWhooshも同じように補助すればいい――との考えが働くが、実際はそう単純ではない。
ここにWhooshのジレンマがある。
KCICの出資比率はインドネシア側60%、中国側40%だ。出資比率に基づいて収益を分配するならば、収入の4割は中国国営企業に流れる。納税者の金で外国企業を間接的に支えることになり、政治的に受け入れがたい。
一方、中国のインフラプロジェクトは「債務の罠」とよく説明されるが、Whooshにそうした解釈が当てはまるとは限らない。融資条件そのものは、実際のところ穏当だったとの見方もある。
アジア・タイムズの分析によれば、中国開発銀行の金利は元本に2%、超過コストに3.4%。出資の過半はインドネシア側が握り、経営の主導権もまたインドネシアにある。
問題は融資の条件ではなく、合弁という構造にあるとも言えよう。利益を度外視した公共事業として扱うこともできず、純粋な商業事業として切り捨てることもできない。その狭間で、Whooshは赤字であることの弁明を見いだせていない。
本音は「中国と繋がりたいが依存したくない」
インドネシアと中国の微妙な関係性も課題のひとつだ。
アジア・タイムズは、Whooshの経営危機により、インフラを地政学的影響力の手段とする中国の戦略が浮き彫りになったと論じる。
資源と巨大な市場を擁するインドネシアは、インド太平洋の要衝に位置し、中国主導の経済圏で中核を担う。だが、両国の結びつきが深まるにつれ、インドネシアは中国に依存しすぎているのではないかという懸念が国内外で広がっている。
インドネシアのプラボウォ・スビアント現大統領は、中国の資本と市場へのアクセスを確保しつつ、構造的な依存は避けるという綱渡りを迫られている。
これはインドネシアだけの問題ではない。フォーリン・ポリシーがローウィ研究所の調査を引用して報じたところによると、「一帯一路」全体で約500億ドル(約8兆円)相当の融資が未返済のまま宙に浮いている。
中国は政治変動に左右されやすく遅延しがちな大型案件に資金を投じてきた。その代償が各地で露呈している。

