半導体製造の鍵を握る日本企業

ABFはAIブームより少し前、コロナ禍をきっかけとして、その重要性が世界に知られることとなった。米AIリスク研究機関のコンバージェンス・アナリシスによると、パンデミック期のPC需要急増でABFの供給が逼迫し、米半導体大手ブロードコムのルーター部品のリードタイムは63週から70週に延びた。インテル、AMD、エヌビディアもこぞって、基板不足による出荷の遅延に陥った。

世界の高性能CPUやGPUが依存する素材の98%超を、少数の東アジアのパートナー企業へのライセンスを通じ、味の素グループが実質的に支配している。その重要性に世界が気づいた出来事となった。

AI産業の屋台骨を日本企業が担う実例は、ほかにもある。

JSR、東京応化工業、信越化学工業、SUMCOと聞いて、ピンと来る人はむしろ少数派かもしれない。いずれも半導体製造に不可欠な素材あるいは装置の開発・供給を担い、いわゆる世界のAI産業の「チョークポイント(代替のきかない供給の急所)」を握る日本企業だ。

世界シェアの9割を支配

米商務省・国際貿易局(ITA)が2024年にまとめたデータが、その重要性を物語る。例えば、回路パターンをウェーハ(半導体の材料である円盤状の素材。ウエハーとも。)に転写する感光材料である、フォトレジスト。これがなければ、いかなるチップも形にならない。その世界シェアの約90%を、日本企業が担っている。

ウェハーを持つ技術者
写真=iStock.com/PonyWang
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フォトレジストをウェーハに塗布・現像するコーター/デベロッパー装置で約88%、熱処理装置で90%超。製造工程の要所という要所を、日本勢がほぼ独占している。半導体の基材となるシリコンウェーハ市場でも日本のシェアは53%にのぼり、信越化学工業とSUMCO、たった2社がその供給の中核を担う。

米大手総合金融機関のバンク・オブ・アメリカは、製造の自動化装置でも日本企業のシェアが64%に達すると指摘する。スマートフォンやSSD(ソリッドステートドライブ)の記憶媒体に使われる「NAND型フラッシュメモリ」、個別半導体(集積回路と異なり基本的に1つの素子で単一の機能を提供するトランジスタやダイオードなど)、そしてアナログ半導体など、各種ウェーハの製造でも日本メーカーが世界市場をリードするとの分析だ。