ソクラテスが語った老後のキャリアとは

年齢を重ねてからの身の処し方は難しいものです。特に役職定年や定年後の再雇用といった変化に直面すると、人生後半戦のキャリアや働き方について思い悩む人も多いでしょう。

そんな今を生きる人たちの悩みに対し、二千年以上の時を超えて現実的なアドバイスを与えてくれるのが、古代ギリシャの哲学者ソクラテスです。

ソクラテスの思想を伝える書物としては、プラトンの対話篇が有名ですが、重要な著作を残した弟子がもう一人います。それが『ソクラテスの思い出』の著者であるクセノフォンで、プラトンとは異なる視点から師の教えや行動を綴っています。

ソクラテスは人が多く集まる場所で時間を過ごし、「ほとんど常に何かを話していて、聞きたい人は誰でもその話を聞くことができた」とクセノフォンは記しています。ソクラテスがアテナイの人々と交わすのは「人間に関わりのある事柄」をめぐる対話であり、「美とは何か」「正義とは何か」「勇気とは何か」「政治家とは何か」「支配とは何か」といった、あらゆるテーマを考察していました。

ソクラテスが人間について考えを深めた末に発する言葉は、人生訓として読むこともできます。しかも本書に記録された対話は、私たちにとって身近なテーマも多く、友人の作り方や親兄弟との関係、リーダーの心得など多岐にわたります。

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なかでも中高年世代の悩みに直球で答えてくれるのが、第二巻第八章の「老後の仕事について」と題した対話です。

この対話は、ソクラテスが古い友人を見かけて声をかけたことから始まります。その友人は国外の財産を没収され、今はやむなく肉体労働で生計を立てていると近況を語りました。

するとソクラテスは、「年をとってもやれるような仕事に就いたほうがいい」と意見したうえで、友人にこう伝えます。

「誰か資産をたくさんもっていて、管理の助手を必要としている人のところへ行き、そこで仕事の監督をしたり、作物の収穫や財産の保全を手伝ったりして、人の役に立ちながら、その見返りに自分も利益を得るのだよ」

なんと具体的なアドバイスでしょう。転職先の見つけ方まで事細かに教えてくれるとは驚きです。ソクラテスは対話において難解な質問ばかりする人というイメージがあるかもしれませんが、意外にも人々の生活に根ざした現実的な回答を与えてくれることも多いのです。

(構成=塚田有香 イラストレーション=米山夏子)

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