「花盛りは過ぎた」と落ち込んだときは

中年と呼ばれる年齢になると、ふとした瞬間に「人生の花盛りは過ぎてしまった」と感じることがあります。実際は40代後半や50代でもまだまだ働き盛りのはずですが、30代と比べると生物としての衰えを感じてしまい、後ろ向きな考えに囚われがちです。時には「ほかの会社に就職していたら、別の人生があったんじゃないか」「ライバルに邪魔されなければ、もっと出世できたのに」などと、もう一つの人生を思い描いては落ち込むことがあるかもしれません。

そんなときこそ、文学の出番です。文学作品を読むメリットの一つは、自分より深く絶望している人物に触れられる点にあります。例えば『人間失格』を読んで、「自分の人生はここまで酷くない」と冷静になり、沈んでいた気分が少し浮上する。文学にはそんな効果があります。

そこで今回は、ロシアの偉大な劇作家チェーホフが絶望の淵にある中年男性を描いた『ワーニャ伯父さん』を紹介します。

(構成=塚田有香 撮影=川しまゆうこ イラストレーション=米山夏子)