少子化を止める方法はあるのか。評論家の白川司さんは「ハンガリーは、子どもを4人以上産めば所得税ゼロといった大胆な子育て支援を実行したが、肝心の出生率はここ数年で急落している。この現象から、今の日本に本当に必要な政策がわかる」という――。
赤ちゃんを高く抱いている両親
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子育て支援に大金を費やしたハンガリー

「日本の少子化が止まらないのは、子育て支援が足りないからだ」

日本の少子化議論は、この前提に立っているように見える。

世界で最も大胆な子育て支援を行っている国だとされるハンガリーが示したのは、この「常識」が必ずしも正しくない現実である。

ハンガリー政府は税控除、住宅支援、無利子ローン、若者向け奨学金免除などあらゆる手を尽くしたが、合計特殊出生率の回復は一時的で、数年後には急落した。

ハンガリーは莫大な子育て支援をおこないながら、なぜ少子化を緩和することができなかったのか。

私はプレジデントオンラインに寄稿した〈「独身税」をつくる国で子どもが増えるわけがない…こども家庭庁が理解していない「少子化が加速する理由」〉で、少子化が子育て支援では緩和できない理由を述べた。

ここではハンガリーの事例から、日本が同じ道を歩まないためには何が必要なのかを、さらにつっこんで考える。

子どもを産むたびに所得税を控除

中欧のハンガリーはEU加盟国でありながら、EUの国際主義と距離を置き、独自の国民主義的な政策を続けてきた。その一環として、2010年代に大胆な少子化対策を打ち出し、一時的に合計特殊出生率を押し上げることに成功した。

このとき、ハンガリーが実施したのは「結婚・子育てに対する経済的・制度的支援」を中心に、次のような政策で構成されている。

最初に導入されたのが、子どもの数に応じて、所得税の控除額を大幅に拡大し、子どもが増えるごとに控除額が段階的に増加する制度である。4人以上の子どもを持つ母親は所得税が生涯免除される制度も導入している。

また、2015年には、結婚したカップルが住宅を購入・建設する際に使える低利・無利子の住宅支援・住宅ローン優遇制度を提供している。子どもを産む計画がある場合の住宅購入支援は、人数に応じて支給額が増える設計だ。

また、結婚したばかりのカップルに対する手当支給である。結婚してから数年間、一定額の支援を受けられる制度である。