世の中の健康法とはどのように向き合うといいか。医師の帯津良一さんは「健康法は、病気をしなければいい、病気が悪くならなければいいという守りの生き方でロマンが感じられない。明日のことはだれにもわからないからこそ、今日一日、一所懸命に働くことができたことに感謝して、大好きなお酒を飲むことは私にとってなくてはならない日課だ」という――。

※本稿は、帯津良一『やり残したことは、死んでからやればいい』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。

おちょこに日本酒を注ぐ人の手元
写真=iStock.com/Toru Kimura
※写真はイメージです

健康法より養生を選択する生き方

私の知り合いで、心臓を悪くして第一線を引退した方がいました。現役のときは魚屋さんをやっていて、日本中を車でまわって、いかにも魚屋さんという勢いのある商売をして大成功したみたいです。

健康が第一だというので、大好きなお酒もたばこもやめました。そして、地域の人たちの健康のためになる活動を始めました。

その活動の一環として、何度か私を講演に呼んでくださいました。

講演では、私はお酒の話を必ずします。

「お酒は養生だから、私には休肝日はない」と胸を張って言うのです。

彼は、何年か精力的に活動したあと、ぱたんと倒れて、そのままあちらの世界に旅立っていったそうです。

後日、奥さんからお聞きしたことです。

「先生のお話を聞いたあと、やめていたお酒を飲み始めました。毎晩、お猪口に何杯かだけ、おいしそうに飲んでいました。そして、ほろ酔いになって、一緒に活動している仲間たちのことをうれしそうに話すんです。あんなにも幸せそうな顔をしている主人、結婚してから見たことがありません」

心臓が悪いのにお酒なんか飲むから死んでしまうんだと言う人もいるかもしれませんが、私はその話をお聞きして、とてもうれしく思いました。彼は本当にお酒が好きだったのだと思います。

健康のためということでずっとがまんしてきましたが、私の話でお酒を解禁しました。健康法よりも養生を選択してくれたのです。