幸せに生きるために知っておくべき人間の本質は何か。医師の帯津良一さんは「無理して明るく前向きに生きようとするからつらい。気持ちが落ち込んでいるときには、しばらく暗くて後ろ向きの自分でいればいい。私は患者さんに対してだけでなく、自分自身のかなしみにも目を向けるようにしている」という――。
※本稿は、帯津良一『やり残したことは、死んでからやればいい』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。
明るく前向きに生きる必要はない
何事もあいまいだと思っていると、物事を決めつけなくなります。「これはいい」「これは悪い」という窮屈な生き方から解放されます。
たとえばこんな決めつけがあります。
「明るく前向きに生きるのがいい」
かつて『脳内革命』という本が大ベストセラーになりました。そこには、明るくて前向きに生きると免疫力が上がると書かれていて、いわゆるポジティブシンキングのブームが起こったのです。
確かに、患者さんたちを観察していると、いい経過をたどっている人は明るく前向きに毎日を過ごしていました。いつもニコニコしているし、気功教室にも積極的に参加しています。
それで、心理療法のチームを作って、患者さんたちが明るく前向きに生きられるようなセッションをプログラムに入れました。
ところが、あるとき「これは違うかもしれない」という出来事が起こりました。
まさに明るく前向きのお手本とも言える女性の患者さん。最近の検査が私の手もとに届きました。悪化していました。私はその患者さんを院長室に呼びました。いつものようにニコニコして入ってきました。
検査結果を伝えました。
すると、彼女の表情がぱっと変わりました。笑顔が消えて、難しい顔になったのです。その日を境に、あんなに毎日通っていた気功教室にも来なくなって、ベッドの上でぼんやりしていました。

