セツは金に無頓着な八雲を“笑っていた”

靴下から銀貨がこぼれ出ている。金の管理がどうこう以前の話である。

そして注目すべきは、セツがこのエピソードを語る時の態度だ。怒るでもなく、嘆くでもない。「ヘルンは生来金には無頓着な方で、それはそれはおかしいようでした」とは、つまり、笑っているのだ。

さらには「そのような俗才は持ちませんでした」と言い切るのがぶっ飛んでいる。俗才、すなわち世俗的な才覚。普通の人なら持っている金勘定の能力を、うちの人は持っていなかった。ただそれだけのことだと言わんばかりである。