「日中関係の悪化」は外交の失敗?
日本のマスコミは「高市政権が中国との関係を悪化させ、損失を負っている」と批判的に報道することが多い。そのため、あたかも日本政府が対中外交に失敗していると感じている人が多いだろう。
だが、これは日本が対中関係の構築に成功したゆえの出来事だと捉えるべきである。そのことはドイツの対中外交と比較するとよくわかる。
これまでドイツは、中国と蜜月関係を築き、中国をうまく利用してきたとみなされてきたが、現在は対中戦略を大きく転換せざるを得なくなっている。
さらに、戦後一貫してきた財政均衡路線を修正し、2025年には財政規律をめぐる憲法上の制度改革を行った。積極財政へと舵を切ったドイツは、自由貿易重視の姿勢を改め、ロシアだけでなく中国に対しても、経済安全保障や産業保護に踏み込んでいる。
加えて2024〜2025年には、中国経済の減速と不動産不況の長期化、欧州向け輸出の鈍化が重なり、ドイツの輸出産業は構造的不振が深刻化した。
ドイツ政府は2025年後半から「産業競争力再建パッケージ」を導入し、EVと半導体の補助金拡充を進めているが、効果はまだ限定的だ。
なぜドイツは、ここまで対中戦略の修正を迫られることになったのだろうか。このことを、日本との比較しながら考えていく。
日本が中国リスクに気づいた「重大事件」
日本もドイツも、中国の台頭を最大の成長機会と捉えて、中国の成長を取り込む形で中国経済との連携を図ってきた。
だが、2020年代に入った現在、両国の立ち位置は明確に分かれることとなった。
日本は「ある事件」をきっかけに、中国リスクに備え始めたことが功を奏している。それは、民主党政権下の2010年9月に起こった尖閣諸島沖・中国漁船衝突事件だ。
これは海上保安庁の巡視船に衝突した中国漁船の船長を、公務執行妨害容疑で逮捕した事件である。
日本の行動は国際法に則ったものであったが、これに対し中国政府は、日本企業幹部を拘束し、日本向けのレアアース輸出を制限・遅延させ、事実上の停止と受け止められる対応を取るなどの圧力をかけた。

