大腸がんは、年間に日本人の15万人以上が罹患し、5万人以上が亡くなる病気だ。先日逝去が報じられた「LUNA SEA」の真矢さんは56歳という若さだった。医師の谷本哲也さんは「大腸がんリスクに関しては日常的に気を付けている人も多いが、その対策には誤解や間違いも含まれている」という――。
大腸内視鏡下でのスネアポリペクトミーによる大腸ポリープの除去
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年15万人以上が罹患し、5万人以上が亡くなる

2月17日、ロックバンド「LUNA SEA」のドラマー、真矢さんが56歳でお亡くなりになったことが報道されました。1989年にバンドを結成し、1992年にメジャーデビュー、数々の曲がヒットし、力強い迫力あるパフォーマンスで多くのファンを魅了した真矢さん。2020年にステージ4の大腸がんと診断され、手術や抗がん剤・放射線治療を受け、2025年9月には脳腫瘍が見つかったことも公表していました。彼の訃報は、多くの人に衝撃を与えたと同時に、大腸がんという病気を改めて自分ごとと捉えるきっかけになると思います。

2013年2月8日、シンガポールでのLUNA SEA。右から2人めが真矢さん
2013年2月8日、シンガポールでのLUNA SEA。右から2人めが真矢さん(写真=Chinnian/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

こうした報道に触れたとき、重要なのは一時的な話題で終わらせず、大腸がんは予防できるがんであり、早期発見で死亡を減らせるがんでもある点を理解することです。

大腸がんは日本人に最も身近ながんの一つで、2021年の罹患数は約15万5000人、2024年の死亡数は約5万5000人と報告されています。

しかし、大腸がんの多くは腺腫など良性の前がん病変を経て何年もかかって進展するため、その徴候を早めに見つけて切除すれば予防できる可能性があるのです。そんな大腸がんに関する、よくある誤解を整理しご紹介してみましょう。

大腸がん予防のためのリスクの考え方

大腸がんのリスクを上昇させる要素として、加齢、大腸がん・進行ポリープの家族歴、大腸ポリープの既往、炎症性腸疾患、加工肉の多い食習慣、飲酒、過体重・肥満、運動不足・長い座位時間、喫煙が挙げられています。これらの要素は単独ではなく、複合的に作用します。だからこそ、完璧主義ではなくとも満遍なく対策を地道にやることが重要です。

大腸がん予防の最適解は、「健康診断で拾い上げる仕組み」を土台に、科学的根拠のある生活習慣を組み合わせることです。過体重・肥満といった体脂肪、特にお腹ぽっこりの中心性肥満は大腸がんリスクと関連する因子とされています((https://www.nature.com/articles/s41366-024-01680-7)。体重は「見た目」ではなく、インスリン抵抗性、慢性炎症、胆汁酸代謝、腸内環境など、腫瘍発生の元となる要因として働きます。体重を増やし続けないことは、がん予防の観点から重要なのです。

また、身体活動は大腸がんリスク低下と関連します。総身体活動量と大腸がんリスクとは反比例し、運動するほど少しずつリスクが下がると考えられています。運動の目標を完璧にしなくても、「座りっぱなしをしない」「少し息が上がる運動強度を生活にときどき入れる」といった注意が有用です。さらに大腸がんを含む複数がんで、アルコール摂取はリスク上昇と関連します((https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2025/10/pr371_E.pdf)。特に「多量・習慣的」な飲酒は避けることが大切です。禁煙も、大腸がん予防でも費用対効果が極めて高い方法です。

さらに家族歴、特に第一度近親者(両親、兄弟姉妹、子供)に大腸がん・進行ポリープの方がいる場合、また、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など)、過去にポリープなどの既往がある場合は、大腸がんになりやすい「高リスク」に当てはまります。

これらの要素がない平均的なリスクの方と違い、高リスクの方は年齢通りではなく、医師とよく相談する必要があります。たとえば米国ガイドラインでは、第一度近親者に大腸がんや進行ポリープがあり、若年発症などの条件によっては、40歳、または家族の診断年齢より10年早く大腸内視鏡を開始し、5年ごとの検査間隔が提案されています。

大腸がんは、がんの中でもポピュラーであり、日ごろから注意している方も多いですが、医師から見ると平均的なリスクの方でもしばしば誤解が見られます。