「一杯のコーヒー」が変える未来
コーヒーは紅茶、日本茶と並び、日本でも最もよく飲まれているカフェイン含有飲料です。統計では日本は世界第4位のコーヒー消費国で、日本人は平均1日1杯のコーヒーを飲んでいます。
※全日本コーヒー協会「日本のコーヒー需要」
国民的飲料の一つではありますが、その一方でカフェインの依存性やご高齢の方での不整脈への影響など健康面で心配な点も指摘されていました。
ところが、ここ数年で健康によいという医学研究データが次々に蓄積されていることをご存知でしょうか。コーヒーの香りに包まれる、その何気ない一杯が、未来の健康を大きく左右するかもしれないという科学的な研究成果を紹介しましょう。
日本人で示されたコーヒーの健康効果
まずご紹介したいのは2015年発表の日本での大規模調査です。中高年の日本人男女約9万人を平均19年間にわたって追跡した結果、コーヒーを全く飲まない人を基準とした場合、1日1~2杯飲む人の全死亡リスクは15%低く、3~4杯飲む人では24%も低かったのです。
特に心疾患については、1日1~2杯で23%、3~4杯では36%もリスクが低下していました。脳血管疾患や呼吸器疾患でも、1日1~2杯で2~3割リスク低下、3~4杯では4割程度低下することが示されました。
※Eiko Saito et al., Association of coffee intake with total and cause-specific mortality in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study. The American Journal of Clinical Nutrition Volume 101, Issue 5, May 2015, Pages 1029-1037.
さらに注目されるのは、同グループがこの2025年11月に発表した研究です。ご存知のように伝統的な日本食は健康的だと言われてきましたが、最新研究はその先を示しています。日本食にコーヒーと乳製品を組み合わせた方が、死亡や心疾患のリスクをより大きく下げていたのです。
※Utako Murai et al., Japanese Diet Index Score and Cause-Specific Mortality in Japanese Men and Women: The Japan Public Health Center-Based Prospective Study. The Journal of Nutrition Volume 155, Issue 11, November 2025, Pages 3726-3736.
男性では日本食だけでも死亡リスクは9%低下しましたが、コーヒーを加えると17%も低下したのです。女性も同じ傾向でした。また、別の日本人高齢者を対象にした調査でも、1日3杯以上のコーヒーを飲む人は、全く飲まない人に比べて死亡リスクが38%、要介護リスクが19%低いという結果が報告されました。
※Daiki Watanabe et al., Association of caffeine, green tea and coffee consumption with mortality and disability among older adults. British Journal of Nutrition, First View, pp.1-9.
これらの結果はコーヒーが単なる嗜好品ではなく、日本人の生活にぴったり合った健康長寿の助けとなる可能性の高さを示しています。それも、和食に朝のコーヒーを添えるだけで、普段の食卓が一段と強力な健康の味方になるのですから、手軽にできます。


