効果を最大化するには朝がおすすめ

では、コーヒーの健康効果を最大限に引き出すには、どのように飲めばよいのでしょうか。飲むこと自体に健康効果があるという研究結果が多いのですが、さらにその効果を高める方法があります。

最も重要なのは、「朝の時間帯」に飲むことです。2025年1月に発表されたアメリカの研究では、成人4万人以上を約10年追跡し、コーヒーを飲む時間帯と死亡リスクの関連が詳しく解析されました。摂取時間は、朝、午後、夜の3つに分類されました。

※Xuan Wang et al., Coffee drinking timing and mortality in US adults. European Heart Journal, Volume 46, Issue 8, 21 February 2025, Pages 749-759.

その結果は驚きでした。朝だけコーヒーを飲む人は、死亡リスクが16%、心血管疾患による死亡が31%も低かったのです。一方、一日中だらだらと飲む人には、こうした効果は見られませんでした。

さらに興味深いのは、朝に飲む人では摂取量と効果がほぼ無関係だったことです。1杯未満でも、3杯以上でも、メリットはほぼ変わりませんでした。つまり、朝の時間帯に集中して飲むという習慣が健康効果の鍵を握っていたわけです。

午後や夜にコーヒーを飲むと、カフェインの影響で睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑えられ、体内時計が乱れるのではないかと研究者たちは推測しています。メラトニン量が低下した状態が続くと血圧が上昇し、酸化ストレスが高まり、かえって心血管疾患のリスクを押し上げてしまうかもしれないのです。

カフェインの効果は個人差がありますが、一般的に摂取後5~6時間は体内に残ります。そのため、夕方以降のコーヒーは体内時計を守る観点からは控えめにしたほうがよいかもしれません。午後や夜間のコーヒーは睡眠の質を低下させるため、就寝前はハーブティーやデカフェに切り替え、質の良い睡眠を確保することも健康維持には欠かせません。

世界地図上のコーヒーベルト
写真=iStock.com/Dimitrios Karamitros
世界の主なコーヒー産地の地図

「朝飲む」だけじゃない…コーヒーを飲む時の注意点

1点目の朝に飲むということに続き、2点目として適量を守ることも重要です。多くの研究で、多くても1日2~3杯までが健康効果が高いとされています。一般的に健康成人での1日カフェイン摂取上限量は約400mg、コーヒー3~4杯相当と考えられています。がぶがぶと過剰にカフェインを摂取すると、不眠や不安、頻脈、頭痛などを引き起こす可能性があり、500㎎以上の大量のカフェインでは頭痛やめまいなどの中毒症状も報告されています。

※農林水産省「カフェインの過剰摂取について

3点目として、無糖ブラックがおすすめということです。他の飲食との組み合わせにもよりますが、砂糖やミルクを加え過ぎでのカロリーや脂質の過剰摂取リスクに注意が必要です。甘いカフェラテやフラペチーノは、コーヒーというよりデザートドリンクと考えたほうがよいかもしれません。カフェで人気のあるチョコレートやキャラメル、フルーツソース、ホイップクリームといったトッピングがのったドリンクは、コーヒーの効果を打ち消してしまうかもしれません。

4点目として、インスタントより挽きたての豆がベターという点です。ペーパードリップで淹れた挽きたてのコーヒーに最も認知症リスク低減効果があったという研究もあります。新鮮な豆を挽いてドリップするほうが、ポリフェノールなどの抗酸化成分を多く摂取できます。忙しい朝でも、ドリップコーヒーを淹れる3分間があれば、一日の始まりを整える良い時間になるはずです。

※Bo Wang et al., Association between coffee and tea consumption and the risk of dementia in individuals with hypertension: a prospective cohort study. Scientific Reports volume 14, Article number: 21063 (2024).