リニア中央新幹線の開通が遅れている。鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは「開業時期は定かではないものの、建設工事の進捗状況はJR東海によって明らかにされている。それを見れば、リニアのリアルな現在地がわかる」という――。
川勝知事がいなくなった静岡県とJR東海の現在
「リニア中央新幹線はいつ開業するのですか」。筆者はしばしばこう質問される。「残念ながらわかりません」。これが筆者の答えだ。JR東海に尋ねても同様の答えが返って来るであろう。
開業時期というのは線路、トンネルや橋りょうといった構造物、駅舎などの施設の建設工事がどの程度進んだかで明らかにされるが、建設工事が一部の場所でまだ始まらず、その開始時期も未定だからだ。
改めて説明すると、リニア中央新幹線とは東京都の品川駅を起点とし、愛知県名古屋市の名古屋駅を通って大阪府大阪市を終点とする新幹線である。
このうち、品川駅と名古屋駅との間の285.6キロメートルは2014(平成26)年12月17日に着工となり、当初は2027(令和9)年の開業を目指していた。途中の駅はすべて仮称で、いまのところ設置が発表されているのは神奈川県駅、山梨県駅、長野県駅、岐阜県駅の4駅だ。建設工事は、東海道新幹線を保有し列車の運転を行うJR東海が担う。
ところが、静岡県内を通る長さ25.0キロの南アルプストンネル内の約10.7キロの区間は着工に至っていない。静岡県からトンネルの建設工事によって沿線に環境破壊が生じるとの懸念が出され、着工の許可が得られていないからだ。
環境破壊への懸念は一つではない。大井川の水が枯れるのではないかというもの、トンネルの建設工事に伴う南アルプスの生態系への影響、トンネルを掘った際に生じる土を県内の土置き場に運んだ場合に生じる問題と3つ挙げられる。
これらのうち、大井川の水が枯れるのではとの懸念は解決したのだが、残る2つは静岡県とJR東海とで完全な合意に至っていない。

