「2026年着工」はまだ確定ではない
静岡県によると、合意が必要な28の項目のうち、2025(令和7)年12月11日現在で合意に至ったのは13項目で、残る15項目は専門部会を通して協議中だという。
協議は1項目ずつではなく、並行して実施されるのであろうが、それでも残る15項目で合意に至るのはもう少々時間を要すると思われる。一部報道では残りの項目も合意の見通しがたち、静岡県がリニア中央新幹線の着工を2026(令和8)年内にも認めるとの記事も出されたが、この件について2026年2月6日現在で静岡県もJR東海も何の声明も発表していない。
JR東海は2024(令和6)年の時点で開業時期を2034(令和16)年以降と示していた。これは、仮に静岡県内の区間が2024年の時点でいますぐ着工となってもこの区間の完成まで少なくとも10年を要する点を見越しての発言だ。
仮に2026年に着工となると開業時期は2036(令和18)年以降と考えられる。しかし、いつ着工となるのかがわからないうえ、建設工事自体も10年で済むのかが不明な現状では、リニア中央新幹線の開業時期は引き続きわからないと言った方がよい。
静岡を迂回することはできるのか
リニア中央新幹線の状況を説明すると次のような質問もよく筆者は受ける。「静岡県内の区間を迂回して何とか開業しませんか」。筆者はこう答える。「残念ながらまず無理です」と。
地図上で大まかに計測したところ、南アルプストンネルが静岡県を通らないように掘削するにはいまよりも約17キロ北側を通過するようにルートを変えなくてはならない。品川駅に近い山梨県側から見ると、線路を右、次いで左、さらに左、右と合わせて4回ほぼ直角に曲げて敷く必要が生じる。
時速500キロで走行するリニア中央新幹線に許された最も急なカーブの半径は8000メートルだ。この半径で直角に曲がった際の距離を求めるには8000メートル×2として直径を出し、円周率のπ(3.14)を乗じる。円周は360度なので、90度の場合は4で割ればよい。ということでこの半径で直角に曲がるには12.6キロ必要だということがわかる。
詳しい計算方法は省くが、半径8000メートルのカーブを4カ所に入れて長さ10.7キロ、幅17キロの道のりを迂回するには、53.9キロ必要となる。本来ならば32キロの道のりなので21.9キロの大回りだ。
リニア中央新幹線はもともと285.6キロで建設が予定されているところ、307.5キロと1.1倍も距離が延びる。しかも迂回する区間も南アルプスの山岳地帯となっているから、ほぼ全区間がトンネルだ。南アルプストンネルは現状予定されている25.0キロに21.9キロを加えると、長さが47キロにも達しようかというトンネルとなる可能性が濃厚である。

