社員の「楽しむ」空気が顧客の体験価値を高める
ビジネスは、突き詰めれば社内の空気がすべて――私はそう考えています。つくり手の気持ちや姿勢は、商品やサービスを通じてお客様に伝わるものだからです。
たとえばプロサッカーの試合。選手たちが手を抜いたプレーをしていては、観客の心が動くことはありません。ピッチに立つ選手だけでなく、監督やコーチ、トレーナー、スタジアムを支えるスタッフといった舞台裏のプロフェッショナルたちもまた全力を尽くして初めて、最高の一戦が生まれます。私たちが届けるお茶も同じです。商品開発チームがお客様と真剣に向き合ってつくり上げた商品を、店舗のクルー(アルバイトスタッフ)が精一杯のサービスとともに提供する。各々が本気で向き合った連携プレーがあって初めて、お客様に心からゴンチャを楽しんでいただけるのです。
仕事といえば苦行を連想する方もいるでしょう。しかし夢中で取り組める仕事には、楽しさがあります。もちろん、楽しいだけが仕事ではありません。インフラや精密機械を扱うような企業であれば、楽しさ以上に規律と正確さこそが大切ですし、私たちも食品衛生においては厳格な管理を徹底しています。一方、ゴンチャが掲げるミッションは「幸せを淹れよう」であり、お客様の日常にHappinessをお届けすること。ティーカフェを通じてお客様に楽しいひとときを届けるためには、私たち自身も仕事を心から楽しめていなければいけません。私の経営者としての仕事は、そのための環境づくりに集約されます。
とはいうものの、私が社長に就任した当時、社内の空気は決して「楽しい」ものではありませんでした。タピオカドリンクブームで飛躍したゴンチャも、ブーム終焉とコロナ禍の直撃で売り上げは急降下。就任初日に感じたオフィスの重苦しい空気は今も覚えています。
社長が反論される姿をあえて社員に見せる
しかし私自身は、社内の空気とは裏腹にゴンチャに大きな可能性を感じていました。「お茶」という商材が持つポテンシャル、完成されたフランチャイズシステム、そして何より、熱意をもった優秀な人材が揃っていたからです。ただ一つ、大きな問題がありました。社員一人ひとりが描くゴンチャの将来像がバラバラだったのです。
そこで私は、マネジメント層を中心とする社員を巻き込んだ「合宿」を実施しました。顔を突き合わせ、意見の違いをぶつけ、方向性をすり合わせる。ブランドのゴールとミッションを再確認する時間を集中的に設けたのです。
この合宿で、私はある仕掛けを用意しました。それは社外から私の過去のビジネス仲間を招くというもの。私に対して「それは違うよ、角田さん」と気安く反論する彼らの姿を見せることで、社長にも遠慮なく意見していいと思える空気をつくりたかったのです。
なぜなら、社員の声に答えを見出すのが私の経営スタイルだからです。
私は経営者としてゴンチャを代表する立場にいますが、現場については現場のプロフェッショナルのほうがよく知っています。私の仕事は、各領域のプロが取り組むべきだと感じている課題解決や挑戦を徹底的にサポートすること。店舗のクルーからマネジメント層まで、意見を言うことは権利であるとともに責任でもあると伝えています。
意見の内容が正解かどうかは大きな問題ではありません。社員には「空気を読まない存在」になることを恐れないでほしいと言い続けています。「出る杭は打たれる」と言いますが、杭は打たれなければ、杭の役割を果たしません。空気を読まない意見があるからこそ、当たり前のこととして見過ごされている課題を批判的に検証する機会も生まれます。
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