他部署が何をしているか知っておくことが第一歩
東京駅八重洲口にそびえる「東京ミッドタウン八重洲」は、国内でも例を見ない複合施設である。
オフィスと商業施設に加え、超高級ホテル「ブルガリホテル東京」、公立小学校「中央区立城東小学校」と「バスターミナル東京八重洲」が同じビル内に収まる。そこに「ヤエチカ(八重洲地下街)」が連結し、平日はビジネスパーソン、休日はスーツケースを引いた国内外の旅行者、さらに地域の子どもたちが縦横無尽に行き交っている。
一歩間違えれば、利用者同士の摩擦やテナントのクレームが発生してもおかしくない。だが、実際に訪れてみると、この巨大ビルには不思議な調和と活気が感じられる。多様な人々が交差するにもかかわらず、空間全体に「過ごしやすさ」が保たれているのだ。
なぜ、これほど多様なステークホルダーが関わる建物が雑多にならず、前向きな空気が維持されているのか。このビルの運営を担うのは、三井不動産、三井不動産ビルマネジメント、東京ミッドタウンマネジメントの3社。関係者の声を丁寧に拾い、時に利害の異なる立場をつなぎ合わせ、街としての価値を高めていく――。意図的で継続的な関係構築こそが、東京ミッドタウン八重洲の「空気」をつくっている。
大型複合ビルでは、関わる部門ごとに目標や評価軸が異なるため、運営部門は縦割りになりやすい。だが東京ミッドタウン八重洲では、この構造に「横の連携」を重ねることで、複雑な利害を調整している。三井不動産ビルディング本部運営企画二部事業グループの堀田文枝氏は語る。
「これだけ多様な用途が集まるからこそ“掛け合わせの効果”をいかにつくっていけるかを大事にしています」
運営3社は、いずれも同ビル7階に拠点を構える。グループ企業とはいえ別会社ではあるが、垣根を意識せず「ちょっといいですか」と訪ね合える環境を整えている。
この風通しの良さを支えているのが、毎月定例で行われる関連10部門の「情報共有会議」だ。各部署から2名ほどが出席、毎回20名程度が顔を合わせる。それぞれの部署は担当するテナントや取引会社の要望や取り組んでいるプロジェクトの情報を持ち寄る。
東京ミッドタウンマネジメント八重洲マネジメント室の弘瀬愛加氏は「新しい価値を生むには、自分の担当領域を超えて、他部署が何をしているか知っておくことが第一歩です」と話す。「この会議は毎回議題を決めませんし、結論を出すことを目的としていません。『この情報を投げておいたら、誰かが拾って生かしてくれるかも』『ここで聞いたら誰かが解決のヒントをくれるかも』といった、気軽な情報共有や相談の機会です」(弘瀬氏)
連携は定例会議の場だけに限られない。若手中心に企画したボウリング大会や飲み会などに、管理職も自然に参加している。
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