コンビニより多い歯科医院。うっかり治療に行って、安易に歯を抜かれたりしないだろうか。歯医者ギライ・飯島勲氏と、歯科医療の実態を追い続けるジャーナリスト・岩澤倫彦氏が、「頼れる歯医者」と「危ない歯医者」の見分け方を語り合った。

――本日の対談のテーマは「歯医者の選び方」です。岩澤さんは「血液製剤のC型肝炎ウイルス混入」のスクープで2003年に新聞協会賞や米・ピーボディ賞を受賞されるなど、医療問題に詳しいジャーナリストです。

【飯島】率直に言って、編集部から連絡をもらったとき、答えようがない状態で慌てましてね。私は何を喋ればいいのかと。岩澤さんは歯科医療の裏側についてはこの人の右に出る者がいないくらいの専門家でしょう。だけど私は歯医者が嫌いですから、歯医者を語る資格なんてないわけですよ。ただ、考えてみると一つ言えることはある。今や歯科医院というのは、コンビニの数と比べられるぐらい多いわけでしょう。

そういう中で、どういう歯医者に診てもらったらいいか、誰もが一度は考えざるをえない。それならば、私自身の経験をお話しできると思ったんです。インプラントです。10年以上前に奥歯を5本インプラントにしていて、以来まったくトラブルがない。この経験なら読者の役に立つかもしれないと。

【岩澤】私が伝えてきたのは「歯科業界の内部告発」なんですね。ずさんな治療をされても、患者本人は気づきませんが、別の歯科医が診ると一発で「手抜きだ」とわかってしまう。真摯な歯科医ほど、今の歯科治療に強い危機感を抱いています。玉石混淆の歯科医院から選ぶのは、本当に難しいですから、飯島さんの「歯医者ギライ」の視点から率直なお話をうかがえることが、読者にとってもきっと参考になると思います。インプラント治療のご経験も興味深いので、ぜひ詳しく聞かせてください。

タコ糸で歯を抜いた歯医者と縁遠い少年時代

――飯島さんはこれまでどのような歯科治療を受けてきましたか。

【飯島】歯が痛くなったら虫歯のところに正露丸を詰めておしまい。長野県辰野町の田舎育ちで、コッペパンひとつが5円だった頃に、歯医者に行ったら1回で何百円も取られる。納豆を売り歩いていたようなわが家の財政事情からしても、歯医者に行くという発想がそもそもなかった。細いタコ糸があれば生活できる、というのがだいたいわが家の生活内容でしてね。正露丸がないときは毒掃丸で代用して(※)、歯を抜くってときは、タコ糸を歯に結んでドアノブにくくりつけ、勢いよくドアをドーンと閉める。これで一発ですよ。上の歯を抜いたら地面に投げて、下の歯なら空に向かって投げる。次の歯がちゃんと生えてくるようにと。田舎の同級生はどこの家でもみんなそんな感覚でしたね。

※編集部註:毒掃丸の効能・効果には痛み止めはありません。

【岩澤】昭和の時代は、痛くなってから歯医者に行くのが当たり前でしたよね。

【飯島】なおかつ、どこ行っても歯医者さんというのは立派な家で、地域の名士でしょう。普通のお医者さんよりも歯医者のほうが、患者がそう頻繁に来るわけじゃないから余裕があるというのか、余計に遠い存在に見えましたね。子供の頃からそういう場所には縁がないという感覚が染みついていた。それとあの治療時の「キーン」という音。あれだけでおかしくなりますよ。動物だって逃げる音ですよね。社会人になっても、虫歯が我慢できなくなったら歯を抜いてもらいに行って、抜いてもらったらもう行かない。忙しいのに1年もかけて治療につきあってられませんから。ビジネスパーソンも同じ気持ちじゃないかと思いますよ。

手術から10年経過も「まったく支障なし」

――そんな飯島さんがインプラントを決断された経緯を教えてください。

(構成=本誌編集部)