失えば二度と生えてこない歯だからこそ、後悔のない選択をしたい。歯にいくらでもお金を使える富裕層と普通の人では、歯への向き合い方にどのような差が出るのか。読者2400人以上が回答したアンケートから探る──。

高額でも満足度の高い自費診療の治療内容とは

「あのとき、抜かずに済む方法はなかったのか」「なぜ、もっと早く投資しなかったのか」――。失ってから初めて、その価値の大きさに気づくのが「歯」である。

今回、本誌はプレジデントオンライン会員を対象に「歯科治療」についてのアンケートを実施。2400人以上からの回答を分析する中で、手遅れになってから気づいた「後悔」の数々が明らかになった。さらに、資産1億円超の「富裕層」と資産1000万円未満の「一般層」との違いを分析したところ、「歯への投資」にも意識の差が明確に見えてきた。具体的にどのような回答があったのか、アンケートの結果を紹介していこう。

まず、人生で「お金をかけてよかった」と思う満足度の高い治療を尋ねた。1位はインプラント、2位は矯正、3位はセラミック治療だった。興味深いのは、経験したことのある治療とは順位が入れ替わっていることだ。自費診療の経験者は回答者全体の58.0%。その中でも最も回答が多かったのはセラミック治療。自費診療経験者の61.5%、つまり2人に1人はセラミック治療の経験者だった。インプラントは29.5%で回答数は2位、矯正は22.9%で回答数は4位である。

インプラントや矯正の経験者が少ないのは、セラミック治療と比べて費用が高額になりやすいからだろう。自由回答を分析すると、インプラントの中央値は約80万円、矯正にいたっては約100万円という高額な費用がかかっている。「最も費用がかかった自費診療にいくらお金を使ったか?」という質問においても、負担の大きさは明らかだ。治療費が「30万円未満」に収まっているのはセラミック治療70.2%に対して、インプラントは10.7%、矯正治療は18.6%にとどまる。逆に「100万円以上」と回答した人の割合は、セラミック治療7.6%に対してインプラント43.2%、矯正42.4%と割合が高くなった。

ただ、その「投資額」への納得感には確かなものがある。例えばインプラント。「まるで自分の歯のように快適。次に傷む歯があれば迷わずインプラントを選択するつもり」(60代・男性)というコメントが寄せられたほか、「もっと早く決断すればよかったと感じるか?」という設問に「強く感じる」「多少感じる」と回答した人の割合は、62.6%と半数超が治療に満足していることが見て取れる。

同様の傾向は矯正にも見られた。「もっと早く決断すればよかった」と感じる人の割合は62.8%と過半数で、「強く感じる」は33.5%に上った。「最初に娘がやり、感化されて私と夫もやった。海外に行くことが多い夫は『本当にやってよかった!』と喜んでいる」(50代・女性)と、家族全員が治療に満足しているコメントも寄せられた。

高額の自費診療であっても、彼らにとっては価値のある「投資」になったことが分析できる。

【図表】「お金をかけてよかった」治療1位はインプラント
【図表】歯を抜いてしまったことへの後悔が最も大きい

富裕層は定期的に通院一般人はトラブルで受診

満足度の高い治療を受けられた人に対して、治療の選択を間違えたことに対する「後悔」の声も多かった。「歯科治療で最大の後悔があれば教えてください」という設問に対して、件数が最も多かったのは、歯を抜いてしまったり、神経を除去してしまったことだった。「昭和の時代、痛みが出たら即抜歯。奥歯をすべて失い噛めない。当時に根管治療の知識があればと悔やんでも悔やみきれない」(50代・女性)、「根管治療で神経を失った奥歯が次々割れ、結局インプラント4本で500万円。

昔の医師は安易に神経を抜きすぎていた」(60代・男性)といったコメントを見ていくと、かつての治療の常識に振り回された悔しさが見て取れる。

さらに「素材・治療法の選択ミス」が2位に続く。「ブリッジではなく最初からインプラントにすればよかった」(60代・女性)という声に象徴されるように、目先の費用を惜しんだことが、結果としてより大きな損失を招いてしまったと実感しているようだ。

(文=本誌編集部 イラストレーション=前田はんきち 図版作成=大橋昭一)