近年のデータを見ると、50歳ぐらいまでであれば、多くの歯を欠損している人はあまり多くありません。その後60歳までの10年間で1〜2本抜けて、70歳までの10年間で3〜4本抜けていく傾向がある。つまり60歳を境に、それまでの不摂生のツケがやって来て、歯が抜け始めるわけです。

抜けることで一番影響が出るのは前歯です。前歯がなくなると心理的にも落ち込んで、人に会いたくなくなって社会性も下がります。前歯以外なら、たとえば奥歯1本を失っても、心理的にはそこまで影響は出ませんが、やはり放っておくと噛み合わせのバランスが崩れ、さまざまな支障が出てきます。

口腔内は連動しているので、奥歯が失われると、噛み合わせや口の開閉などの動作をサポートしている顎関節に過剰な圧力がかかり、顎関節症の症状が現れることがあります。そうなると、顎が痛くて口が開けられなくなったり、顔が歪んだりします。噛めないだけではなく、栄養が上手く摂れなくなってフレイル(虚弱)という状態にもなりやすく、寝たきりになる可能性もある。脚力やバランス機能の低下を引き起こして、転倒のリスクが高まるという報告もあります。歯が抜けたままの状態は新たな問題を誘発しやすいのです。

(構成=木原洋美 図版作成=大橋昭一)