病気の診断は一つでも「治し方」は複数ある
いい歯医者とは何か。それは「名医かつ良医」だと私は考えています。
経験豊富で技術も知識も素晴らしく、学術、教育活動にも熱心に従事している先生が名医です。名医は卓越した臨床結果を数多く有し、難症例においても安定した結果を出すなど、的確な診断力と精確な治療手技を持っている先生といえるでしょう。対して、良医とは患者さん一人ひとりに親身に寄り添い、病気だけでなく患者さんを診ることのできる先生です。正確な診断力と適切な治療選択ができるなど、高い医学的能力に加え、倫理観と優れた人間性を併せ持つことが求められます。医療では、名医である外科医と良医の内科医が役割分担しながら連携することで高度なチーム医療を実践することができます。
一方、歯科医療では、歯科医は患者さんを独りで診ることが多いので、名医と良医の両方を兼ね備えなくてはなりません。患者さんとは1〜2カ月どころか、一生お付き合いする「かかりつけ医」になる可能性もあります。患者さんの背景や要望、ちょっとした変化もできるだけ察知しながら、技術・知識以外のメンタルサポート的なこともこなしていく。名医として適切な治療を施術するだけでなく、アフターケアもする良医として寄り添う必要もあるのです。
いい歯医者を見分ける一番のポイントは、治し方を複数提案できるかどうかです。
病気の診断は一つです。歯周病については、2018年にアメリカ歯周病学会・ヨーロッパ歯周病連盟より公表された歯周病新分類があり、日本でも現在はそれに基づいて診断しており、わかりやすい基準ができています。
しかし、診断は一つでも治療法は複数あります。歯周病に限らず欠損・補綴に関しても、いい歯医者なら、「歯を残したいなら再生医療を使うこともできるし、その他の対応もあります。抜歯なら欠損した部分を回復する方法として、インプラントやブリッジ、入れ歯があります。インプラントと入れ歯を組み合わせた治療もできますよ」と複数の提案をしてくれるはずです。
それに対して、「これはインプラント一択です」など、自分の得意とする特定の治療に誘導しようとする歯科医もいます。もちろん得意な治療法ですから結果も悪くはなく、問題が起きることも少ないかもしれません。しかし、患者さんには自分の病態と各種治療法を理解できるように説明し、それぞれの治療の効果やリスク、治療期間と費用、どれくらい長持ちするかなど、予後についても説明しなければなりません。場合によっては家族とも相談して、納得して選んでいただくことが最善であるからです。
必要な「説明・理解・納得」のプロセスを省き、説明の「説」と納得の「得」だけを遂行すると「説得」になります。そんな説明足らずの治療だと、患者さんは理解と納得ができずに「過剰診療」「利益追求」とネガティブに受け止めてしまうのではないでしょうか。
いい歯医者なら、決断をその場で迫ったりはしないものです。口腔内やレントゲンの画像写真を見せながら、時間をかけて治療計画と一緒に必要な情報を説明するでしょう。治療法は当然一択ではなく、プラン1から5ぐらいまであるのが理想です。
初診時にレントゲンだけでなく、口の中の写真(口腔内規格写真)も撮って残しておくかどうかも、いい歯医者選びのポイントになります。レントゲンだけでは把握できない、口の中の状態があるからです。治療の進行に応じて適宜、写真やレントゲンを撮影し、治療効果を説明してくれることはいい歯医者の条件です。
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