人生の重大な選択をする際の判断基準は何か。立命館アジア太平洋大学前学長・名誉教授の出口治明さんは「僕は脳出血で倒れた後、リハビリのプロが示してくれた『ファクトとロジック』があったから、3秒で歩行訓練をやめる決断ができた。一方で、数字・ファクト・ロジックでは正解のない問題は解決できない」という――。

※本稿は、出口治明『誰も行ったことのない場所へ行こう。そして誰もやらなかったことをやろう。』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

歩行のリハビリ
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人生はトレードオフ

この選択は正しかったのだろうか――。

もっといい選択はあったのではないだろうか――。

そんな後悔や迷い、悩みを抱えてしまったら、どうしたらいいのでしょう。

どんなふうに、考え方を整理したらいいのでしょう。

就職活動中の学生は、志望した会社に選んでもらうことで頭がいっぱいです。あなたも内定をもらったときは、「選ばれたこと」の喜びを味わったと思います。

しかし就職してしばらくすると、その会社にいることが当たり前に思えてくるので、「選ばれた」ことの喜びが徐々に薄まっていくでしょう。一方で、そこを「選んだ」自分の判断を振り返るようにもなります。

どんな会社も、就活中の学生には想像できない面がありますから、「思っていたのと違う」と後悔する人も少なくありません。とくに複数の会社から内定をもらって「どちらにすべきか」と悩んだ人は、自分の選択を問い直したくなるものです。

でも、「どちらを選ぶべきだろう」とか「こうしたほうがよかったのではないか」などと迷ったり悔やんだりすることに時間を費やすのは、僕には「もったいない」と思えてなりません。

社会に出たばかりのあなたは、これからの長い人生の中でも、さまざまな選択を迫られると思います。仕事上のことだけではありません。結婚、出産、育児、転職など、人生は選択の連続です。

でも、目の前の選択肢のうちどれが正解なのか、ほんとうのところはわかりません。

正解がわからないからこそ迷うわけですが、人生はトレードオフなので、同時に2つを選ぶことはできません。こちらを選べば、あちらは選べない。当たり前のことです。