何かを選ぶということは、何かを捨てるということ

そういう状況では、「どちらかを選ぶ」ではなく、「どちらかを捨てる」と考えたほうがいいでしょう。たとえばクローゼットが満杯になると、新しい洋服を買えません。でも、思い切って古い洋服を処分してしまえば、そのスペースに新しい洋服を収納することができます。

つまり、何か新しいものを手に入れようと思ったら、先に何かを「捨てる」べきなのです。そして、捨てたものはもう取り戻せません。

あなたも、エントリーする会社を決めた時点で、それ以外の選択肢を捨てました。捨ててしまったのですから、いまさら「あちらのほうがよかったかも」と考えても仕方がありません。

ちなみに、ご存じかもしれませんが、僕はとても短気な性格です。昔は、会合の時間に遅れる人がいると、何度も何度も腕時計に目をやってイライラしていました。あるとき、「腕時計なんかしているから、時間を気にしてイライラしてしまうのだ」と気づいて、腕時計を捨ててしまったことがあるくらいです。

そんな性格ですから、選択を迫られたときも、たいがい即決です。迷ったり悩んだりする時間は、もったいない。さっさと決めて、次の行動に移りたいのです。

チェックマークのついた木製の立方体ブロック
写真=iStock.com/marchmeena29
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リハビリ3カ月で理学療法士の先生が告げた言葉

たとえば脳出血で倒れた後には、こんな選択を迫られたこともありました。一命を取り留め、リハビリテーション病院に移ってから3カ月後のことです。

僕の後遺症は、右半身麻痺と失語症。そのため、体の回復を目指す理学療法、日常生活に必要な動作を訓練する作業療法、そして言葉を訓練する言語聴覚療法という3種類のリハビリに取り組んでいました。

とくに一所懸命に取り組んでいたのは、歩行訓練です。APUの学長職に復帰するのが最大の目的でしたから、ひとりで自立した生活を送れるようにならなければいけません(学長時代、僕は大学の近くに単身赴任していました)。

しかし医療保険の対象となるリハビリ期間は最長で180日。長くても6カ月しかリハビリ病院には入院できません。その半分が過ぎたとき、理学療法士の先生が僕にこう告げました。

「自分の足で、外をひとりで歩くのはあきらめましょう」─―。

残酷な言葉だと思われるかもしれませんが、これはきわめて合理的な提案です。リハビリ期間にはかぎりがあるので、時間は有効に使わなければいけません。すべてのリハビリに時間を費やしていると、どれも中途半端に終わるおそれがあります。

このまま歩行訓練を続けても退院までに自力で外を歩けるようにはならないので、その時間を失語症のリハビリに使ったほうがいい──それが先生の判断でした。