書籍に「すぐに役に立つこと」は求めない
30年以上にわたり1000万枚以上の領収書を見てきて、富裕層が知識の習得にかけている金額には常々驚かされてきました。自ら起業して財を成し、今も富が持続している富裕層は、例外なく読書家であるといっていいでしょう。
オフィスに伺うと個室の大きな書棚に本がびっしり並んでいますし、お預かりする領収書の束には書籍を購入している領収書が大量に入っています。ひとたび何かに興味を持ったら、それに関連する書籍をまとめて購入する傾向も見られます。毎月何十冊もの書籍を購入している方も多いのですが、すべて通読するのではなく、ざっと読んで必要な箇所だけをインプットする、概要を掴む、あるいは少し読んで関心が途切れてしまったら見切る、といった読み方をしているようです。
一方で、会社の本棚には古典的な名著や、長く読み継がれてきた哲学書、文学作品が並んでいます。新刊だけでなく、何年も前に読んで感銘を受けた本を折に触れて読み直しているようでした。こう言うと気になるのは、「富裕層は、いったいどんな本を読んでいるか」でしょう。
「自分たちがやってきたことは、先人たちがどこかで経験してきたこと」という認識から、自分で会社を興した起業家や偉大な経営者の伝記を読む人が少なくありません。また、人それぞれではありますが、たいていは小説のような文芸書やライトな実用書ではなく、どっしりとした人文書が多くを占めています。
古典は解説本ではなく、原典を読むべき
具体的なジャンルを挙げると、政治経済、歴史、文化芸術、人類学、哲学、科学など。ずっと読み継がれている古典や、学術書など物事の原理原則を説いている書籍が目立ちます。原典をわかりやすく噛み砕いた解説本ではなく、限りなく原典に近いものが多くを占めます。日本語翻訳版もありますが、英語で書かれた原書も多く見かけます。いずれも軽く読めるものではありません。
しかし、それなりに読むのに時間がかかっても、普遍的な原理原則を理解してしまった方が、表層的な知識よりもはるかに身になるということを経験的に知っているのでしょう。富裕層にとって読書とは、深く確実な知識を得る一番有効な手段なのです。こうしたアカデミックな書籍は、明日から何かの役に立つわけではないでしょう。特定のスキルやノウハウが身につくわけでもありませんし、もちろん娯楽的でもありません。
リベラルアーツ(教養)の重要性については、多くの分野で語られていますが、リベラルアーツは単なる知識の詰め込みではなく、「ものの見方」「考える力」「問いを立てる力」を育てるものです。歴史・哲学・文学・社会学・自然科学などを横断的に学ぶことで、物事を一面的に捉えず、文脈や背景、長期的視点から深く考える力が培われます。
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