お金にシビアなのに、数百万円のアートは買う
ビジネスでは常に判断が求められます。考え得る最善の判断を下すためにも、発想力や思考力を磨く習慣は欠かせません。そこで知識・教養を深め、多様な情報に触れることが重要なのはもちろんなのですが、かといって「頭で考える時間」ばかりになってしまうのも、よくないようなのです。
私は富裕層専門税理士として、30年にわたり富裕層の申告業務や資産管理に関わってきました。チェックした領収書の数は1000万枚に上ります。領収書を見て驚くのは、大半の方がアートにそれなりの支出をしていることです。国内外の美術館にもよく出かけているようですし、ご自分でも頻繁にアートを購入していらっしゃいます。
お金に非常にシビアな富裕層が、アート購入のために数百万円の支出をしている。それがなぜなのか不思議だったのですが、富裕層の方々とお話ししていて、答えが見えた気がしました。
富裕層がアートを購入する理由として、まず私たちが思い浮かべるのは「投資目的」でしょう。もちろんそういう意味合いもゼロではありません。アートは株式や不動産と異なる分散投資効果があり、価格が下がりにくく、インフレ耐性が高いです。さらに、世界の創業者たちは美術館という形で社会に還元しています。
じつは「節税目的」ではない
富裕層は「お金の使い方」を“消費”ではなく“投資”として考えています。その投資は株式や不動産のような金融資産にとどまらず、自分の感性や美意識を磨く支出にも向かっています。アートの購入はその代表例です。
絵画や彫刻などのアートは、インフレ局面でも価値を保ちやすい「実物資産」です。貨幣価値が下がっても、作品そのものの希少性は失われない。特に国際的に評価されている作家の作品は、長期的にみると安定的な資産価値を保つ傾向があります。たとえば近年、村上隆や奈良美智といった日本の現代アートが海外オークションで数倍の価格をつけるケースも増えています。
つまり、アートは感性への投資でありながら、同時にインフレに強い資産でもあるのです。
一方で、「節税目的で買う」という発想は誤解されがちです。法人が業務用として社屋や応接室に飾る場合には、減価償却資産として経費計上が認められることがあります。たとえば500万円の絵を耐用年数8年で償却(定率法)する場合、1年目は125万円を経費にでき、法人税率30%とすれば年間約38万円の節税効果。果たして大きな節税といえるでしょうか?
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