江戸時代に活躍した絵師、喜多川歌麿とはどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「史実においてその名前が確認できるのは、蔦重が刊行した書籍である。それ以前の出生地や生年などについてはわかっていないことが多い」という――。
東京国際映画祭が開幕。俳優の染谷将太、東京国際映画祭にて=2017年10月25日、東京・六本木
写真提供=Wireimage/ゲッティ/共同通信イメージズ
東京国際映画祭が開幕。俳優の染谷将太、東京国際映画祭にて=2017年10月25日、東京・六本木

成人しても体を売り続ける歌麿

このところNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」では、蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)と喜多川歌麿(染谷将太)の二人三脚ぶりが、微笑ましく描かれている。

「べらぼう」では、蔦重がかつて火事場から救いながら、その後、姿を消した謎の少年「唐丸」が、蔦重と再会後に歌麿になったという設定だ。夜鷹の母親に虐待され、幼くして体を売らされていたが、火事で母親を捨てて逃げた。そうした負い目から、成人しても体を売るなど自分を傷めずには生きていられない――。

第18回「歌麿よ、見徳は一炊夢」(5月11日放送)で、蔦重はそんな男を救い、歌麿という画号をあたえ、「俺ゃお前を当代一の絵師にしてえんだ。だから、俺のために生きてくれ」といった。以後は、蔦重と一緒に耕書堂を切り盛りしながら、蔦重の指示により、いろんな画風で絵を描いている。

第22回「小生、酒上不埒にて」(6月8日放送)でも、蔦重をおおいに助けた。筆を折ると言い出した恋川春町(岡山天音)の代わりに、朋誠堂喜三二ほうせいどう きさんじ(尾美としのり)の新作の絵付けをするように蔦重からいわれた歌麿だったが、やはり春町自身が描くべきだと思い、喜三二と連れ立って春町のもとを訪れ、ふたたび戯作を書き絵も描くように説き伏せた。