「塾のボリュームゾーン」を確認する
学習塾を運営していると、お子さんの成績が上がらないのを理由にして、すぐに別の塾へ転塾させようとする親御さんがいらっしゃいます。焦る気持ちも理解できますし、塾との相性もあるので転塾=悪い、とは思っていません。ただ、成績不振だけを理由にした転塾は、多くの場合においてうまくいきません。
そもそも、成績が伸び悩む原因は「塾の指導力が悪いから」と断定できない事情があります。
まず、悩んだときに確認してほしいのは、お子さんの実力と、その塾の合格者の真ん中である「ボリュームゾーン」がミスマッチを起こしていないかという点です。「難関校に何名合格」と華々しい実績を掲げていても、それは一部のトップ層の話かもしれません。その塾のボリュームゾーンにいる生徒がどこに受かっているのかが重要なのです。このミスマッチに気づいていない可能性があります。
また、カリキュラムの問題も避けては通れません。たとえば算数の場合では、速さの単元が終わったと思ったら図形、次には場合の数と変わるので、たまたまその時期にお子さんの学力が定着していないというケースもあります。このような背景にもかかわらず転塾してしまえば、使っているテキストも、カリキュラムの進め方も、指導方針もすべてが一新され、振り出しに戻ってしまいます。
子供がこれまでと全く違うやり方に適応するまでには、どうしても数カ月単位の時間がかかります。その間にも、学習のペースは大きく乱れてしまいます。また、担当講師や塾友との関係性を再構築するのにも時間とストレスがかかります。
「楽しんでいる」のか「ラクしている」のか
そこを見極めずに、成績が上がらないからと次々に塾を渡り歩いてしまうご家庭がいらっしゃいますが、塾側の視点からしてももったいないなと感じています。子供の成績だけで次々と塾を変えるのは、できれば避けてほしいのです。
では、転塾を決断していいのはどのようなケースなのでしょうか。それは「塾の運営やサービス」が根底から崩壊しているときだけです。
まず、お子さんに「今の塾は楽しい?」と聞いてみてください。もし「楽しい」と言われた場合は、その中身をしっかり確認してください。たとえば「今日は何を習ったの?」「先生の名前は?」と聞いて、具体的な授業の面白さや先生の話が出てくるなら、その塾はお子さんに合っています。
しかし、授業中にスマホを見ていても怒られない、帰りに友達と寄り道してお菓子を食べるのが楽しい……そんな様子を感じ取ったなら、それは「楽(たの)しい」のではなく、ただ「楽(らく)」をしている可能性が高いです。
たとえば、テキストに鉛筆の跡が全く残っていない、記述問題が白紙のままで返ってくるなどに表れます。こういう状況を放置している塾は、もはや勉強する場所として機能していない恐れすらあります。ただ塾にいって時間を潰しているだけ……このような状態を見過ごしている塾は、サービスとしてすでに終わっているのです。

