歌手の野田愛実さんの新曲「sunrise」が、2026年2月27日(金)より全国公開されている映画『#拡散』の主題歌を担当。野田さんの澄んだ歌声が作品のラストを彩っている。
本作の主人公・浅岡信治役を演じるのは成田凌さん。信治の存在を世に広めるきっかけとなった新聞記者・福島美波役を沢尻エリカさんが演じる。作品の企画・監督を務めたのは、映画『ゴールド・ボーイ』(2024年)で製作総指揮をとった白金(KING BAI)監督だ。
作品は、情報社会の中で翻弄されていく人間の心の弱さとあっという間に情報が拡散されていく現代社会の実像がテーマ。本作のために書き下ろした楽曲「sunrise」(作詞・作曲)を野田さんはどのような思いを込めて制作したのだろう。じっくりお話しを聞いた。(取材・文=安田ナナ)
歌手の野田愛実さん
撮影=北日本新聞社

作品の世界観に深く寄り添うため、リアルな情景を意識

――まずは完成された映画『#拡散』をご覧になった感想を聞かせてください。

【野田さん(以下敬称略)】最初に見た時は、虚実が入り交じる情報に翻弄される主人公の姿に浅はかさや滑稽さを感じました。しかしその反面、自分の心の中にもきっとそういう一面があるのでは、という「恐ろしさ」のようなものを感じました。また、ストーリーの中で「承認欲求」についても考えさせられる場面がありました。作品は難しいテーマを扱っていましたが、共感できる部分がたくさんありました。

――重厚感のある作品なのでエンディング主題歌を制作するにあたり、熟考されたのではと想像します。書き下ろしの「sunrise」を制作する上で監督からは「こういうふうにしてほしい」などの要望はありましたか?

【野田】白監督とはデモを聞いてもらいながら何度もやり取りをさせていただきました。私は初期の段階ではリアルな情景を入れずに作っていましたが、監督から「誰もが情景を思い浮かべられるような、具体的な描写が欲しい」という言葉をいただきました。そこで「歩道橋で待つ僕を見つけて手を振る君」とリアルな情景描写を入れたところ、楽曲の物語としての深みが出ました。監督からとても素敵なアドバイスをいただいたおかげです。

歌手の野田愛実さん
撮影=北日本新聞社

――監督とは何度かやり取りをしながら「sunrise」が出来上がったわけですね。歌詞を紡ぐにあたり映画の中で参考にしたシーンはありますか?

【野田】信治が亡くなった奥さんの遺影と遺骨の前で飲み散らかしたまま眠り、朝を迎えるシーンがとても印象的でした。信治は目覚めた時に「昨日よりもいい自分になって愛されたい」「強い人間になりたい」という願いがあったのではないかと考えました。

――そのシーンからどんな歌詞が誕生したのでしょう。

【野田】そこから「朝焼けは雨 夕焼けは晴れ」ということわざが思い浮かびました。この言葉は朝に東の空が赤くなるとその日は雨が降る兆し、そして夕方に西の空が赤くなると次の日は晴れという意味です。「朝焼け」が雨を暗示しているということを知り、信治の気持ちとリンクしているように感じました。サビの部分の「朝が来るたび願っても」という言葉も信治の持つ弱さや虚しさ、切なさや脆さが朝焼けの雨が隠してくれるのではないか、それが救いになるのでは、という思いを込めて書きました。