※本稿は、2026年3月27日に青山ブックセンター本店にて開催された、川邉サチコ氏の新著『87歳。“私基準”で生きる』の刊行を記念したトークショーを記事化したものです。
自分を大切にできる大人の女性を増やす
川邉サチコさんが初の自伝的作品『87歳。“私基準”で生きる』を上梓したきっかけには、多くの女性が抱えがちな戸惑いや生きづらさなど、今まさに社会が掲げている課題に着目した、ある出来事があったという。
【川邉サチコさん(以下、川邉)】「書籍のオファーをいただいたとき、『年齢を重ねて生き方に迷う女性に勇気を与えるものにしたい』という提案がありました。それを聞いて、私自身のある決心を思い出したのです。
50代の頃のことですが、若者の街・渋谷を歩いていると、私と同世代の女性が周囲に遠慮するかのように自信なさげに歩いている姿が目についたのです。『なぜ?』と思い、とても悲しくなりました。そこで『日本の大人の女性たちを美しくしたい』『彼女たちに堂々と胸を張って街を闊歩してもらいたい』『それこそが私の使命だ』と決意。それが現在のトータルビューティーサロン『KAWABE.LAB』を立ち上げるきっかけになったのです。
それまでずっとプロのモデルや俳優にヘアメイクを施していましたから、サロンで一般の女性と触れ合う時間はとても新鮮でした。その一方で、戸惑いを感じたのも事実。いちばん衝撃だったのが『自分を大切にできていない女性が多すぎる』ということ。家族のことが第一優先で、自分のことはあと回し。わざわざサロンに足を運んでもらって、イメージどおりに仕上げたとしても、そのあと家族の反応がイマイチだと元に戻ってしまう人もいたのです。『それってどうなの?』って思いません? その人の基準は“家族”や“夫”であり、自分の軸がないんですよね。今回の本のタイトルには“私基準”という言葉が入っています。確固たる自分の軸、要は“私基準”をもった大人の女性をひとりでも多く増やしたい。そんな思いを込めてこの本をつくりました」
クリエイターとして信頼される秘訣とは
【原由美子さん(以下、原)】「今回ご一緒するにあたって、川邉さんとの出会いを思い起こしていました。あれはあるハイブランドの撮影だったと思います。フォトグラファーは今や巨匠と呼ばれる操上和美さんで、アートディレクションはその後アメリカに渡って大成功を収めた石岡瑛子さんと、妹の石岡怜子さん。そのときのヘアメイクが川邉さんで、スタイリストとして参加した私はすごく緊張していた記憶があります」
【川邉】「原さんはそうおっしゃるのだけど、実は私、まったく記憶がなくて(笑)。でも今日はとにかく原さんと話がしたかったの。私たちの仕事って“ザ・裏方”でしょ。現場ではチーム一体になるものの、最終的に評価されるのはファッションデザイナーやカメラマンなどほかの人。それに関して原さんは何か感じることはありました?」
【原】「当時はとにかく必死だったから、あまり意識はしていなかったかもしれません。でも私のなかで川邉さんの存在は大きかったですよ。というのも仕事をするうえで『この人が現場にいてくれるなら安心だ』と思わせることはとても大切だと思っていたから。そういう意味で川邉さんは、クリエイターやスタッフ含めてチーム全員に安心感をもたらす人でしたね」





