毎日汗みどろ野球部でも慶應AO突破
慶應義塾大学のAO入試(総合型選抜)は毎年大変な人気だ。
SFC(総合政策・環境情報学部)などで実施される、書類と面接による試験。志望理由書や活動実績(コンテスト、英語資格など)で、主体性や探究心を多面的に評価するのが最大の特徴になっている。
そこへ「我こそは」と全国の精鋭受験生が殺到する。倍率は例年4~6倍だが、10倍超に達することもある。
長野県立諏訪清陵高校の教員・守屋光浩さんはその高く厚い壁を実感している。これまでの歴代赴任校で教え子が挑みながら何度も涙を飲んだ経験があるからだ。2025年度もひとり、教え子がチャレンジした。
自身が監督を務める同校野球部で昨夏のチームで4番打者だった茅野悠喜さんだ。
「(慶應AOには)全国の猛者が集まっているんですよ。ドキドキしてました。最初の書類(志望理由書)通過の倍率が6倍。狭き門の書類をやっと通った後の面接も、2人に1人しか合格が出ないんです」
茅野は、昨秋に「合格」を果たした。野球部引退からわずか2~3カ月での電撃合格である。その一報を聞いた時、守屋監督は、「前に教え子が東京大に受かったときぐらいうれしかった」と頬を緩ませた。
野球部入部時に「慶應に行きたい」宣言
茅野さんは、諏訪清陵では1年からレギュラー捕手として活躍し、時には投手としてマウンドにもあがった。その実力は複数のプロ野球球団が視察にきたほどだが、本人は高校に入学してすぐの4月、守屋監督に「慶應に行きたい」と告げていた。
「慶応は華がありますし、他の東京六大学に推薦で入学するには、上位のチーム成績が必要でしたし、まず自分に(野球)選手として相当な実績もなかったです」
高1の秋、慶應大野球部の練習に参加し、憧れはさらに増したそうだ。
茅野の能力を高く買った大学側からは指定校推薦を進められたが、残念ながら諏訪清陵にその枠がなかった。ならば指定校推薦のある青山学院大はどうか、となったが、茅野本人も家族もそれには目もくれず初志を貫く覚悟を決めた。
慶應大学や附属の高校が実践する「エンジョイ・ベースボール」を体現したい強い気持ちは揺るがなかった。これ以後、プロ野球のことも封印した。つまり、「俺は野球と勉強の両立を高い次元で成立させる」と心に決めたわけだ。


