中国はアメリカを凌ぎ、世界の中心となれるのか。現代中国研究家の津上俊哉さんは「中国はトランプが関税を利用して、賛同する国との結束を高めている」という。『世界の大転換』(SB新書)より、東京大学准教授の小泉悠さんと法政大学教授の熊倉潤さんとの鼎談を紹介する――。(第1回)
中国共産党総書記の習近平氏とロシアのプーチン大統領の会談(ビデオ会議経由)
写真=Wikimedia Commons
(写真=ロシア大統領府/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

ロシア人が日本人に好意的な理由

【小泉】ロシアと中国を結ぶ新しい天然ガスパイプライン計画「シベリアの力2」があります。「敷設費用はみんなロシアが持て」なんて中国から上から目線の条件をふっかけられて、ロシアは「そこまで言われたら、のまない!」と突っぱねるパワーバランスのようです。

2025年9月にプーチンが訪中した際にはとうとう合意が成立したとも伝えられましたが、どうもパイプラインの中を通すガス自体の価格がまだ決まっていないようなんですよね。やはりロシアはなんだかんだ言っても大国で、ある程度中国と渡り合う能力はあるんでしょう。

【熊倉】ロシアでは中国の印象もだいぶよくなりましたし、中国製品も比較的抵抗なく受け入れられていますね。

【津上】やはり中国の経済力が大いに向上したということでしょう。胡錦濤こきんとう時代までだと考えられなかった「各国が金目当てで中国に擦り寄ってくる」面もありますが、「お金持ちは大切にされる」というベネフィットを十二分に享受したのが習近平ですね。

【小泉】人々の日々の生活に、中国のハイテク製品や工業製品が入ってくるという影響も大きい気がします。例えば多くのロシア人は日本人に悪からぬ感情を持っていますが、その8割ぐらいは「日本車は優秀」というイメージからではないかと思うんですよ。地方では日本車の性能に絶対の信頼感がありますし、北方領土でも軍用トラック以外はみんな日本車でした。

駐車場の車
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世界の関心は日本→中国に

【小泉】理由を聞いたら、「ここらには自動車修理工場がない。壊れたらおしまいだから壊れない車を買う」って言うんですね。それだけ日本製品が信用されていて、そういう製品を作る日本というのもなかなかの国だと思ってもらえている。それと同じように、中国製の車やスマートフォンや日用品を通して、ロシア人や中央アジア人が抱く中国のイメージが変わっていく気がします。

【津上】アフリカも南米も同じです。日本もソニーやホンダで世界に知られ、親しまれる時代がありましたね。

【小泉】80年代生まれの僕や熊倉さんが大学生の頃は、「経済やイノベーションが世の中のドライバーである」と見えていて、だから僕は安心して軍事オタクをやっていられました(笑)。しかしだんだん政治・軍事というハードな論理、純粋な利益追求ではない理論が大きい世界になりつつある気がします。かつての経済論理の中では勝ち組国家だった中国は、政治・軍事の比率が高まっていったらどうなるんでしょう?

【津上】2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟した頃、中国は「今は戦略的機遇(Strategic Opportunity)の時代だ」と言っていました。局地紛争はあっても深刻な対立はない世界で、「この機に乗じて中国経済を発展させるのだ」と。それで20年間ブイブイやって大きな成果を挙げたところに、先ほどお話しした「90年ないし100年周期の大変局」が訪れました。