気に食わない国は徹底的に排除
【津上】ただ、中国の政治系の人は、「大切な拠り所がなくなった」という不安感より、「中国の時代が来る」という夜郎自大な楽観が優っているようです。経済安全保障に振り子が捩れると、今まで効率至上主義のグローバリゼーションから受けてきた恩恵は消えてダメージを食らう。だから「自由貿易体制を堅持しよう」というプロパガンダをやっているわけですが、端から見ると矛盾しています。
「気に食わない国には輸入制限をしておいて、自由貿易体制が大事なんてどの口が言ってるんだよ?」とね。それでも彼らは気にしない。大きな国だから、「自分の振る舞いを人はどう見るか」というイマジネーションが足りないんですよね。今後も「自国に都合のいい自由貿易体制を堅持!」という姿勢で仲間を募っていき、アメリカ主導のグローバリゼーションの退潮を見届けようとしているのでしょう。
【小泉】中国が自由貿易体制の守護者……結構、皮肉な話ではありますね。
トランプを悪者にしようとする印象操作
【津上】中国はFTA(自由貿易協定)をベースにしたグループづくりの形をとって、自由貿易体制を極力温存しようとしています。中国はすでに二国間のFTAを17も締結していますが、中核になるのは、ASEAN10(東南アジア諸国連合、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア)と日中韓と豪州、ニュージーランドが加盟する「RCEP(地域的な包括的経済連携)」です。
インドは抜けちゃいましたけど、15カ国も加盟するメガFTAですから大変な財産です。さらにTPP(環太平洋パートナーシップ協定)にも加盟意欲を見せつつ、「関税の棍棒を振り回すトランプは悪玉、自由貿易を守ろうとする中国は善玉」という印象操作をしながら、イニシアチブをとろうとしている。端からは「中国勢力圏をつくろうとしている」ようにも見えます。
【小泉】ロシアの首都はモスクワで、同じスラブ民族であるウクライナの首都がキーウ、ベラルーシの首都はミンスクです。三つの首都の間隔が数百キロずつぐらいで、きれいに三角形を描いています。この「スラブの三角形」がソ連の中心部だったわけです。この意味でソ連はやっぱりヨーロッパの国だったし、今でもロシア人の約4分の3はウラル山脈より西側で暮らしています。

