アメリカが考える「備えるべき最も深刻な戦争」とは
【小泉】村野さんはアメリカの安全保障サークルに日本人として関わっているわけですが、将来考え得るシナリオや防衛力のプランニングが議論されていますよね。
「極東有事や日本の防衛体制は?」という話のプライオリティは高いんでしょうか?
【村野】非常に高いです。今はウクライナ戦争が続いているので、「今後のヨーロッパをどうするか?」という議論も盛んですが、米国が備えるべき最も深刻な戦争は、中国とのものだということで一致していますし、少なくともどのTTX(Table Top Exercise、机上演習)でも、「台湾有事で日本が脱落してしまったら、勝ち目がない」というのは共通認識になっています。
例えば一番広く参照されているこの手の資料として、CSIS(戦略国際問題研究所)が2023年1月に公表したウォーゲームの報告書があります。そこでは台湾有事に関連する24通りのシナリオが検証されており、その大半で中国の台湾制圧の阻止に成功しています。「中国軍は台湾を武力で併合できなかった」という結末です。
逆に、侵攻阻止に失敗するシナリオも二つだけあります。一つは台湾が単独で中国に立ち向かうという「米軍が介入しないシナリオ」。
台湾有事のカギを日本が握るワケ
【村野】もう一つは、「米軍が介入できないシナリオ」です。これは日本が在日米軍基地の使用を許可せず、米軍の出撃拠点がより遠いグアムやハワイに限定されてソーティ(出撃回数)が減るというものです。これでは戦闘攻撃機による、中国の水陸両用部隊への攻撃が非効率になります。
また日本の基地から飛び立つ戦闘機には、遠方からやってくる爆撃機の安全を確保する役目もあります。中国の水上艦艇に対する爆撃機からの対艦攻撃は着上陸阻止の要ですから、これができなくなると作戦効率がどんどん下がって、結局は押し込まれてしまうことになります。
根源的なこととして「台湾が戦うことを諦めない」というのがありますが、同じぐらい重要なこととして「日本が台湾防衛戦線から脱落しない」がある。逆に言うと、日本を心理的な脅しか物理的な妨害で脱落させられれば、中国としては勝ち筋が見えてくる。中国はこの「セオリー・オブ・ビクトリー(勝利の方程式)」をよく理解しているはずで、だからあれほど大量の戦域打撃能力を構築しているわけです。

