中国がやりかねない“核の恫喝”

【小泉】僕はまさにそれを懸念してます。ロシアの核戦略論では1990年代以降、開戦初期段階とか米軍が介入してくる前の段階で核兵器を限定的に使うデモンストレーションをやり、ロシアが有利なうちに(あるいは決定的な不利になる前に)戦争を終わらせるというシナリオが議論されてきました。「escalate to de-escalate(E2DE)」、つまり戦争のエスカレーションを止めるために自ら小規模なエスカレーションをやってみせるという戦略ですね。

これを中国の戦略に応用するなら、南西正面で誰も死なないように核爆発を起こして見せ、「米軍に協力すると次は本当に被害が出るぞ」という核のブラックメーリング(脅迫)を行うようなシナリオが考えられます。

その上で、今のお話を伺いながら一つ疑問に思ったのは、「日本は早期に拠点として使えなくなる」という話と「日本が脱落すると困る」という話の関係性です。

つまり、開戦初期において米軍は日本から退避し、反撃の局面では、ある程度日本周辺の航空優勢を再獲得できた段階で戻ってくる。それで台湾に対する侵攻阻止の反撃作戦を行う、ということなんでしょうか?

【村野】軍種によって多少違いはあるかと思います。東日本大震災のときと同じで、空母や強襲揚陸艦、厚木や岩国の艦載機は日本を離れるでしょう。他方で、空軍の戦闘機部隊は一時分散するとしても西太平洋の範囲内、数時間で移動できる距離だと思います。

日本に課せられる重要な任務

【村野】しかしいずれにせよ、これらのアメリカ軍が戻ってきて日本周辺を反攻の拠点にすることができるよう、戦力発揮基盤を維持して守り抜くというのが、日本に課せられた一番重要な任務です。この足がかりがなくなるとアメリカが戻ってこられなくなるので、ゲームオーバーです。

【小泉】その場合、反撃の拠点となる基地は嘉手納かでなと三沢?

【村野】全部です。使える基地は全てです。

【小泉】とにかく反撃フェーズでは、日本を基地にできるようにしておかないと抑止の信憑性が疑われるということですね。前述した、中国の海上・航空優勢下でもあくまでも抵抗を続ける能力と、海上・航空優勢を取られるエリアを限定する能力とが求められますね。

でも、全てを日本から引き揚げることはできないはずだし、それができるなら最初から日本を基地とする必要もないはずです。空軍力は一時退避するとしても、日本に残り続ける戦力もあるということですね?

【村野】動かすべきでないものとしては、地上発射型の長距離ミサイルがあります。日本も量産し始めていますし、場合によってはアメリカが持ち込むこともできる。一方で、貴重な航空戦力と空母は基本的に退避させないといけない。つまり有事には「航空機ベースの対艦攻撃能力が一時的に使えなくなる」前提に立つ必要があるので、今の防衛力整備では長距離対艦ミサイルをさまざまなプラットフォームから発射できるよう多様化させているんです。

ミサイル防衛
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