数字では測れない軍事力

【小泉】だから、「12ひとに式(地対艦ミサイル)」をまず造り、「12式能力向上型」として長射程の対艦ミサイルを開発しているわけですね。「こんな12式があるか!」ってほどかけ離れてますが。

小泉悠『世界の大転換』(SB新書)
小泉悠『世界の大転換』(SB新書)

【村野】文書上、「全く新しいミサイルを造る」よりも手続きが簡単だったのでしょう。

【小泉】役所がよくやる手ですね。昔のソ連も「Tu(ツポレフ)-22Mです」とあたかもTu-22の改良型であるかのように言って、全然違う飛行機を造ってきた。

【村野】今の中国の「H-6」もアメリカの「B-52」も、昔とはだいぶ違う、全く別の爆撃機になっていますからね。

【小泉】H-6に至っては完全に魔改造されてる(笑)。そう言えば2025年5月にインドとパキスタンの衝突が起きたときに、インド空軍のフランス製戦闘機ラファールを撃墜した、パキスタン空軍のJ-10戦闘機は中国製でした。

【村野】いろんな国の技術が混ざって、新しい戦闘機が生まれていますよね。

【小泉】それからいわゆる軍事力ランキングみたいなものには出てきませんが、飛行場そのものの抗堪性とか回復能力がとても重要です。今の『国家安全保障戦略』や『国家防衛戦略』がそのあたりに焦点を合わせているのは大事だと思います。

戦闘機
写真=iStock.com/viper-zero
※写真はイメージです

日米双方にとって有益な防衛努力

【村野】幸か不幸か、それはトランプ政権が日本に防衛費のさらなる負担を求めていることと、うまく折り合う余地があると思っています。昔で言う「思いやり予算」、最近は「同盟強靱化予算」と言っていますが、駐留米軍に関連する予算には基地の補強や滑走路などの整備予算も含まれています。

要するに、中国に攻撃をされるのは避けられないとしても「より面倒くさい攻撃をしなければいけない」という体制を構築して、「大変そうだから、攻撃はやっぱりやめておこうかな」と思うように仕向ける。

いわゆるコスト賦課という発想ですが、こうした努力にお金を投じるのは日米双方にとって有益です。これはトランプ大統領にゴマをするために要らないものを買うというようなことではないし、前方展開するアメリカ軍をより安全にしてリスクを減らすための措置です。それが結果的に日本の安全を高めることにもなるのだから、全く損のない防衛努力ですよ。

【小泉】なおかつ、日本の「レジリエンス(機能を維持・回復する能力)」を上げるというのは、量的に軍事力を増やすという話でもないので、「対抗軍拡のジレンマを招いている」と非難されにくいと思います。「あくまでも簡単に殴り倒されないように防御してるだけですからね?」「それで向こうがミサイルを増やしてくるんだったら、軍拡してるのは向こうですよね?」って話にしやすいし、とてもいい方法だと思います。

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