中国の成長はいつまで続くのか。現代中国研究家の津上俊哉さんは「この10年間中国は賢くない方向に金をガバガバ使い過ぎた。この負債を大掃除していかないと経済はもたない」という。『世界の大転換』(SB新書)より、東京大学准教授の小泉悠さんと法政大学教授の熊倉潤さんとの鼎談を紹介する――。(第2回)
ミハイル・ミシュスチン首相がロシア政府官邸で習近平中国共産党総書記と会談
写真=Wikimedia Commons
(写真=ロシア政府/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

中国にはイーロン・マスクが出てこないワケ

【津上】アメリカにはイーロン・マスク、ピーター・ティールのような大金持ちの「テック(テクノ)・リバタリアン」がいますが、中国は違います。

【熊倉】ジャック・マー(馬雲)も叩かれましたね。

【津上】政府外のプラットフォーマーが影響力を持つことを、中国共産党は許さない。最近はジャック・マーも赦されて表に顔を出すようになってきましたが、共産党が「叩きすぎた」と反省して軌道修正したからじゃありません。締め上げたら相手が屈服したので、「逆らったらどうなるか、よくわかっただろう? 改心したなら、赦してやるよ」という構図なんです。

ただ、全ての権力の独占を続けるには、共産党のもつ経済的な力が持続することが必要ですが、その先行きについては「当分保ちますけれども、未来は暗い」というのが僕の持論です。「共産党を中心とするカチッとした国家」は、5年以内には消えないけれど、20年後も安泰というのは無理だと思います。

【小泉】2030年代から40年代あたりに、中国はいろんなことができなくなっていく、と?

【津上】限界が来ると思うのは、まず経済の面です。過去10年間、経済資源を支配した中国政府は、賢くない方向に金をガバガバ使いすぎました。その結果、中国のバランスシートは、資産の部には大量の「なんちゃって資産」、負債の部には実質不良債権と、大量のゴミが堆積してしまいました。

乗車客はいないのに維持費だけがかかる鉄道

【小泉】その「ガバガバ」のうちで、一番賢くなかった使い道はなんですか?

【津上】不動産バブルに勝るとも劣らず問題だったのは、地方政府のインフラ投資ですね。他の国では考えられないぐらい巨額のお金を吸い上げて一気に投資する、中国ならではの現象です。高速鉄道網は発達しましたが、「黒字路線は北京‐上海以外にあるのか?」みたいな状態です。特に蘭州‐新疆のような中西部は「造ってみたけど乗客は少なく、維持費だけで大変だ」という有様。

しかも中国のインフラって、駅舎も空港も政府の建物も、「なんでこんなに豪勢にしたのか」みたいなのがいっぱいあるでしょう? 投資額を増やして足元の成長率を上げると、将来の重荷になっていきます。

「無駄なインフラ投資ではなく、社会保障に富を回すべきだ」というのは理論的にも国民経済的にも真っ当ですが、そうなると田舎にでっかい駅を造っていた党や政府の人たちの仕事が減ってしまうし、共産党の実権が縮小してしまう。よほど経済が崖っぷちまで追い詰められないと、実権を手放さないでしょうね。