広大に広がる“イケイケ時代の墓標”
【熊倉】2010年代に中国の地方に行くと、巨大な高速道路があちこちに建設されていました。かなり辺鄙な場所でよく見かけましたので、「仮にできたとしても経済効果があるのかな?」と思っていましたが、案の定、途中で建設が見直しとなったケースもあるようです。工業団地を造るつもりが土地の整備だけで止まっている広大な空き地とか、「中国がイケイケだった時代の墓標」が地方には多くありますね。
【小泉】経済の先行きがあまり明るくないなら、「再生産に寄与しない兵器ではなく、役に立つことに投資しよう」という話に持っていけるかどうかだと思います。ソ連はゴルバチョフが軍事費を削ろうとしました。「ソ連軍を大幅に縮小し、核兵器も大幅に減らす。西側に攻め込むレベルの軍事力はやめて、純粋に防御的な軍事力に転換する」と主張した。
ゴルバチョフの軍縮プランに協力的な軍人もいましたが、もちろん主流派は不満でした。この点は、中国の人民解放軍はどうでしょう。習近平が「こんなに軍事費ばかり使っていたら未来はない。削るんだ!」と言えば人民解放軍は従うのか? それとも面従腹背で、利権を維持しようと画策するのか?
【熊倉】そもそもなんですが、「軍事費が莫大すぎて経済を圧迫している」という発想が中国にあるか疑問です。ソ連のように「改革の重要課題=軍事費の削減」になっていくのかは、私にはわからないですね。
毒素が溜まりまくっている中国
【小泉】2025年の中国の国防費は1兆7800億元、日本円で36兆5000億円くらいというのが公表値ですね。また、国防費の額というのはカウントの仕方次第というところがあり、例えば『ミリタリーバランス』では「狭義のカウントなら1兆6900億元、広義のカウントなら2兆2000億元」というふうに記載しています。いずれにしても膨大な軍事費に思えますが、それでも「一番大きな負担は軍事費ではない」というのが中国の人たちの認識ですか?
【津上】経済を圧迫している大きな負担と言えば、インフラと不動産ですね。最近、僕は中国人にこんなたとえ話をするんです。「投資は経済効果を生まないと意味はないし、儲からなければ富は循環しない。だが、中国は経済効果を生まず、儲からないインフラや不動産に富を注ぎ込みすぎた。これは悪くなった食べ物を誤って口に入れたようなものだ。
普通の人なら吐いたり下痢したりするが、中国は鉄の胃袋らしく吐きも下痢もしてこなかった。政府がガチッと経済を支配してきたからだ。でも、「吐いたり下痢したり」は、身体が毒素を体外に排出する生理現象で、必要だから起きることなのに、中国はそれをしていない。
【小泉】毒素をお腹の中に溜め込んでいる(笑)。

