ANAの客室乗務員として初めて、65歳定年まで勤め上げた大宅邦子さん。国際線路線の立ち上げにも携わり、主に国際線のファーストクラスで長く乗務してきた。大企業の経営者とも多く接してきた大宅さんが乗客とのコミュニケーションで気を使っていることとは――。

※本稿は、大宅邦子『新版 選んだ道が、一番いい道』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

飛行機を見ている空港の出発ホールに立っている女性
写真=iStock.com/NDStock
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クラスが違ってもお客様に変わりはない

45年のCA生活で、私ははじめの13年は国内線、その後32年は国際線を担当してきました。

チーフパーサーという搭乗するCAをまとめる立場を長く務めていたため、後輩CAから「ファーストクラスのお客様を前に緊張してしまうことがあります」と相談されることも多くありました。

しかし、責任あるお立場や著名なお客様に私がどう接していたかといえば、それは他のお客様へのそれと異なることなく、じつにシンプルなものでした。

「あまり構えず、スモールトークを誰とでも」

ファーストクラスでもエコノミークラスでも、お客様に変わりはありません。

これこそ、お客様と接する秘訣と、同僚CAたちには常々答えていました。

仮にファーストクラスのお客様が大企業の経営者だったとしても、飛行機で顔を合わせたCAに、「うちの会社の経営は、今後どうしたらいいんだろう?」と難しい相談をしてくることなどありません。

「今、このひとときを快適に過ごしたい」と思っていることでしょう。

それなら「ロンドンも春なのにずいぶん冷え込んで、あいにく雨の予報です。どうぞ気をつけてお出かけください」という、ごく普通の会話で十分ではないでしょうか。

高級店よりも気軽でおいしいお店

機内では、冷たいものは冷たく、あたたかいものはあたたかいまま、おいしく召し上がっていただき、お好みに応じてそれに合うお酒もおすすめする。喉が渇いたといったご要望があれば、即座にお応えする。快適な空間で静かに休んでいただくためのお手伝いをする。それにプラスしてスモールトークを用意すれば、ファーストクラスのおもてなしとして、十分だと思うのです。

私がよくお客様に尋ねられたのはレストラン情報でした。ご紹介するのは地元の人が行くお店。高級店に足を運んだこともありますが、着ていくものにも気を使うし、ワインを頼むにも気おくれするしで、落ち着いて味わえませんでした。

それなら気軽で、「そんなに高くないのにおいしい店」がいいと感じます。

「近所の人が日曜日に来るようなイタリアンで、年配のご夫婦も小学生を連れたファミリーも、おいしいものをシェアして食べるようなお店ですよ」

スモールトークの延長で、自分のお気に入りを紹介することもしばしばでした。