日本で過熱する英語教育は本当に必要なのか。ベンチャーキャピタリストの原丈人さんは「文化は言語によって伝わっていく。英語教育が過熱し、日本語の重要度が下がっていけば、日本の文化、伝統が大幅に傷つけられた状態になる」という――。

※本稿は、原丈人『THE BEST WORK 「最高の仕事」を生きる』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

私たちの言葉は「思考」と深く結びついている

あなたは、この記事を日本語で読んでいるはずだ。日本語以外の言葉を使うことはできるだろうか?

一方、外国語が使える人に質問がある。あなたは人生の大きなテーマや自分の考えをまとめるとき、頭の中で何語を使っているだろうか?

私は海外で活動している以上、外国語はわかるけれども、自分の考えをまとめるときに使うのは「日本語」で、文章を書くときに気持ちを乗せられるのも、読むときに文章の奥行きまで想像できるのも日本語だ。

言葉は私たちの「思考」と深く結びついている。

半分が脳の形が描かれた、イラストの電球を持っている手
写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn
※写真はイメージです

父が9歳の私を香港に連れて行ったワケ

9歳のとき、私は両親に連れられて初めての外国である香港へ行った。

「メリークリスマス」のネオンサインがきらめくクリスマスの尖沙咀(チムサーチョイ)のにぎやかな情景は、子ども心に強く焼き付いた。

父はどうして9歳の私を香港に連れて行こうと思ったのか。私が中学生になって英語を習い始めた頃、その理由を話してくれた。

「英国の植民地下にある香港で、アジア人がいかに英国人から差別されているか。その現実を見せておいたほうがいいと思った」

父によると、香港の後、私をベトナムにも連れて行く予定だったそうだ。ところが、ときはベトナム戦争が激化する直前。ケネディ政権による北ベトナムへの空爆が開始されたことで中止にするしかなかったという。

父がベトナムで見せたかったのは、アメリカが支配している南ベトナムの現状。つまり、あの旅行で英米が強い影響力を発揮しているアジア諸国がどんな状況にあるのか、子どもながらに感じ取ってほしいという思いがあったのだ。