セグロウリミバエの拡大が止まらない。沖縄ではゴーヤーやヘチマなどに出荷制限がかかり、影響の拡大が危惧される。害虫問題に詳しい進化生物学者の宮竹貴久さんは「現在は『不妊化法』という切り札を使って封じ込めを図っている。奮闘する現場の実情を知り、日本全体で国家レベルの危機管理として“生物安全保障”について考えてもらいたい」という──。
検査に合格したゴーヤー。「合格証」が貼られてようやく持ち出し可能になる。
筆者撮影
検査に合格したヘチマ。「合格証」が貼られてようやく持ち出し可能になる。

「経済安全保障」と「生物安全保障」

米中覇権争い、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の緊迫化など、半導体やエネルギー分野を中心に「経済安全保障」への社会的な関心がかつてないほどに高まっている。

その一方で、いま世界で静かに重要性を増しているのが、「生物安全保障(バイオセキュリティー)」である。

日本でも、その最前線の1つといえる害虫駆除の現場で異変が起きている。

沖縄のゴーヤーは本土に持ち帰れない

沖縄に観光へ行っても、ゴーヤーやスイカ、トマト、パパイヤなどを自由に本土へ持ち帰ることができなくなっている。空港では植物検査が行われ、国による「検査済み」でなければ持ち出しは禁止される。

日本はいま“長期防疫戦”に突入している。相手は、海外から侵入した小さな害虫――セグロウリミバエだ。

3月18日に放送された日テレNEWS「every.特集」(*1)でも話題になったこの害虫は、今や鹿児島県の奄美群島にまで広がっている。

しかも問題は、単なる害虫被害にとどまらない。冒頭に書いた通り、これは日本の「生物安全保障」が機能不全を起こし始めていることを示す危険信号なのである。