私たちがコロナ禍で学んだこと
この構図に、既視感を覚える人も多いだろう。コロナウイルスである。
2019年末からのコロナ禍の中で、街には人がいなくなった。みんな密を避けて家にこもり、外界との接点はオンラインのつながりだけとなった。病院では身内の面会もままならなかった。あの数年間は、いったいなんだったのだろうか。
初動封じ込めの難しさ、変異株への恐怖、物流と人流の混乱、社会全体への長期的ダメージなど、今回の害虫駆除と重なる部分は多い。私たちは、つい数年前にそれを経験したのだ。
にもかかわらず、日本では依然として「バイオセキュリティー」という概念が十分共有されていない。だが本来、生物安全保障とは、以下のような分野を横断する“国家レベルの危機管理”だという認識が高まる必要がある。
・外来生物
・感染症
・水際防疫
・国際物流
・インバウンド
・気候変動
・生態系保全
・農業安全保障
「生き物」がリスクになる時代
害虫問題は農業に限った話ではない。
外来種対策もミバエのみならず、ヒアリ、ツマアカスズメバチ、クビアカツヤカミキリ、セアカゴケグモ、アライグマ、ヌートリア、ブラックバス、カミツキガメ、オオキンケイギクなど、毎日のようにメディアを騒がせている面々がいる(*8)。
そして危機は、害虫被害や、あるいはウイルスによる感染症といった個別事象、つまり、「点」でとらえるべきではない。
害虫やさまざまな生物、あるいは目に見えないウイルスまで、国境を越えてさまざまな危機が侵入してくる、広義の「バイオリスクの時代」ともいえる社会環境にあって、日本社会はいったいどう備えるかが問われているのである。
