いま沖縄の空では「ハエ」が降っている
だが、現場は手をこまねいているわけではない。日本へのセグロウリミバエの定着を阻止するために、いま沖縄では、かつてウリミバエ根絶(1993年に沖縄・奄美全域から)に成功した“最終兵器”が投入されている。
「不妊化法」だ。
これは、大量飼育したミバエに放射線を当て、不妊化したオスを空から大量放出する方法である。野生メスが不妊オスと交尾すると卵は孵化しない。これを繰り返せば、野外個体群は徐々に減少する(*5)。
現在、那覇市にある「ハエ工場」では、毎週2400万匹規模のセグロウリミバエを増殖できる体制が整えられている。
そして伊江島などでは、ヘリコプターから毎週数百万匹の“不妊バエ”が空中散布されている。
文字通り、「空からハエが降っている」のである。
実際、2026年春には、伊江島で野生個体数の減少傾向も確認され始めた。この方法は、日本がかつて世界に誇った駆除技術でもある(*6)。
しかし、問題はその規模だ。
「沖縄だけで手いっぱい」…奄美に回せない現実
かつて週に1億匹以上のウリミバエを増産した那覇にある「ハエ工場」の生産能力では、沖縄対応だけで限界に近い。奄美群島まで全面展開する余力はない。
セグロウリミバエは、ウリミバエよりも一回り体サイズが大きいことも対応を難しくしている一因だ。
そのため政府は、かつてウリミバエ増殖施設だった奄美大島の施設改修予算を計上した(*4)。だが、現場関係者によれば、本格稼働は2027年以降になる見込みだという。
つまり、それまで奄美群島では「十分な武器」がないままに、この新手の敵と戦わなければならない。
しかも相手は生物である。生物は進化する。
