台湾有事は本当に起きるのか。実際に起きるとしたらどのように発生するのか。現代中国研究家の津上俊哉さんは「中国の本音は台湾の自発的に降参だろう」という。『世界の大転換』(SB新書)より東京大学准教授の小泉悠さんと法政大学教授の熊倉潤さんとの鼎談を紹介する――。(第3回)
中国 vs 台湾
写真=iStock.com/Gwengoat
※写真はイメージです

台湾有事に対する中国共産党の意外な本音

【小泉】いろいろな取材で聞かれて胸焼けしているかもしれませんが(笑)、台湾有事はあると思いますか?

【熊倉】それは常にあると思います。明日起きるかもしれません。ただ中国共産党からすると、台湾の人々が「自発的」に帰順してほしいんですよね。

【津上】中国の伝統の思想から言うと、「強大な軍事力を見せつけて威嚇して、最後はピースフルに、しかし強制的に統合する」という孫子の兵法です。「本当に殺し合うなんて下策も下策」というのが中国人の価値観でしょうね。だから「トランプはひょっとすると、『新しい対中三原則』みたいなことを言うかもしれない」というような期待感があるかもしれません。

「アメリカが兵隊を送ることはないと一言言ってくれれば、台湾を降参に追い込んでいける」というのが基本シナリオとかね。日清戦争のとき、「定遠」「鎮遠」という軍艦がありましたが、軍備を増強するのは周辺を威嚇するためで、「それを本当に使うのはバカのすることだ」みたいな価値観は基本的に変わっていないんですよ(笑)。

ウクライナ侵攻後に起きた変化

【小泉】そこは極めて実利的だし、軍事力というものを政治的に捉えている感じがします。軍事力というのはまずもって古典的な戦争、つまり高烈度の暴力闘争の道具であるわけですが、それに限られないんですよね。

もっと言えば、政治目的を達成するために行われる国家間闘争が戦争なわけです。とすると、別に軍事力にこだわる必要はなくて、「非暴力的手段が主で軍事力が従」という闘争のあり方だって考えられる。

政治的圧力や経済封鎖の効果を高めるために、ごく限定的な空爆を行うとか、軍隊を集結させて脅しをかけるとかですね。こっちのほうが中国としてはメインのオプションなんじゃないかと思うんですが、台湾や日米同盟側としちゃそうならない可能性を考慮しないといけないわけですよ。

ものすごい勢いで質的向上を遂げる人民解放軍と戦える能力を持たないと抑止の信憑性が保てない。そうすると中国もさらなる軍事力の近代化を進めるでしょうから……いや、アジア人同士で何やってんだろうなとちょっと虚しくなってきますね。不毛です。

【熊倉】本当に不毛ですね。ロシアのウクライナ侵攻後、私は金門島に行きましたけれど、前線の緊張感のようなものは全くなく、のどかなものでした。今この状況で、中国が攻めてくるわけがないとわかっているんですよね。ロシアのウクライナ侵攻後、中国はむしろやりづらくなった、というのが、中華圏、中国語圏に漂う感覚だと思います。