一目でわかるロゴは「時代遅れ」なのか
一昔前、日本の街を少し歩けば、右も左も「ルイ・ヴィトン」だった。
空港のターンテーブルで荷物を待っていれば、モノグラムのキャリーケースが流れてこない回はない。老若男女を問わず、誰もがその「LV」のロゴを誇らしげに掲げていた時代があった。それは間違いなく、実用性とラグジュアリーを両立した、日本の「国民的ブランド」としての風景だった。
しかし、2025年の今、その景色は少し様変わりしている。
先日、プライベートバンクで富裕層を担当する金融関係者と話す機会があった。彼は顧客の消費動向について、興味深いことを口にした。
「最近、金融資産3億円以上の顧客で、あからさまなルイ・ヴィトンのモノグラムを使っている人は、表向きにはほぼゼロですね」
ここ数年、富裕層の間で定着した「クワイエット・ラグジュアリー(静かなる贅沢)」のトレンド。ロゴやブランド名を前面に出す「見せびらかす消費」は品がないとされ、上質な素材とシンプルなデザインで、わかる人にだけわかる「静かな余裕」を纏うことが美徳とされるようになった。ユニクロのようなシンプルさと、エルメスのような職人技が同居する世界観だ。
富裕層の「ヴィトン依存」は消費から「投資」へ
では、ルイ・ヴィトンは富裕層の選択肢から外れてしまったのか?
答えは「No」だ。むしろ、彼らの「ルイ・ヴィトンへの依存度」は、質を変えてより深まっていると言っていい。彼らは消費しているのではない。「投資」しているのだ。
なぜ、トレンドが「ロゴ隠し」に向かう中で、ルイ・ヴィトンだけが別格の扱いを受けるのか。その謎を解く鍵は、意外な場所にある。質屋の買取価格表だ。
富裕層がモノを買うとき、彼らは無意識に「出口戦略」を考えている。つまり、手放すときにいくらで売れるか、というリセールバリューだ。
ここで、ある「連立方程式」が浮かび上がる。
方程式②:高価買取=圧倒的な需要(人気)
方程式③:圧倒的な需要=偽物製造の動機
この3つの方程式を連立させると、皮肉な結論が導き出される。「偽物の流通量が多いブランドほど、本物の資産価値は盤石である」という解だ。
これを私は、ニュートンの「万有引力の法則」ならぬ、「万有模倣の法則」と呼んでいる。本物が強く輝けば輝くほど、その影(偽物)もまた濃くなる。ルイ・ヴィトンの栄光と偽物の氾濫は、経済学的に見れば表裏一体の現象なのだ。

