誤解1:「便潜血陽性でも無症状だから様子見」
大腸がんに関する日本の対策型検診は、便潜血検査が基本です(https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/62/8/62_1519/_pdf/-char/ja)。便潜血陽性なら精密検査として大腸内視鏡へ進むことが重要で、ここを先延ばししないことが生死を分けます。日本の対策型検診では、40歳以上を対象に年1回の便潜血検査(免疫法2日法)が用いられ、ガイドラインでも高く推奨されています。ただし、便潜血検査でがんを見つけるというより、出血しやすい病変を探って精密検査につなぐきっかけであることに注意が必要です。
最も大切なのは、陽性のときに「何の症状もないから」「もう一回便潜血して陰性だったから」「痔だから」といった理由でスルーしたり様子見したりしないで、大腸内視鏡などの精密検査をやっておくことです。
便潜血検査で1回でも陽性が出たら、症状がなくても原則として大腸内視鏡を受けておくべきでしょう。なぜなら、便潜血陽性はたまたまではなく、大腸のどこかで出血が起きている可能性を示すからです。
がんや前がん病変は、初期には無症状のことが多く、出血も持続せず断続的に起こるため、次の検査で陰性になることもあります。しかし、それは異常なしの証明にはなりません。実際、便潜血陽性後に精密検査を受けない人では、進行がんで見つかる割合や死亡リスクが高いことが報告されています。便潜血はあくまで入口であり、原因を直接確認し、その場でポリープなどを切除できるのは内視鏡検査だけです。便潜血陽性の結果を放置することは、せっかく開いた予防のチャンスを自ら逃してしまう行為に等しいのです。
「お尻にカメラを挿入する」ことに恥ずかしさや痛み、恐怖など心理的な抵抗感を抱くのは理解できます。ただ、最悪、命にかかわることなので検査結果を放置しないほうがいいことは確かです。
誤解2:「大腸内視鏡は症状が出てから受ける」
大腸内視鏡の価値を最大にするのは、無症状のうちに受けるスクリーニングとしての役割です。血便、便通異常、原因不明の貧血、体重減少などがある場合は診断目的の検査で、年齢にかかわらず早めの内視鏡検査が勧められます。
米国では45〜75歳で定期スクリーニングが標準とされ、平均的なリスクの人でスクリーニング内視鏡を選ぶ場合、10年ごと(結果が正常で高品質の検査が前提)が代表的な検査の頻度とされています(https://www.cdc.gov/colorectal-cancer/screening/index.html)。
やや古いですが重要な研究結果では、腺腫性ポリープを内視鏡で切除したグループで、その後の大腸がん罹患が予想される値より低いことが示されました。さらに長期追跡で大腸がん死亡が低下したことが示され(Zauber et al., NEJM 2012)、ポリープ切除が将来の死亡を減らしうる予防方法であることが強く裏づけられました。
つまり大腸内視鏡は、診断の道具であると同時に、がん予防に踏み込める治療的検査なのです。ポリープを内視鏡で切除することが、その後の大腸がん死亡を減らしうることが長期データで証明されているのです。

