「時間とお金をかけて採用してもすぐにやめてしまう」と悩める人事担当者は多い。人材マネジメントに詳しいグローネクサス代表の小出翔さんは「人材は、自分の努力がスキルとして蓄積され、それが公正に評価されることを望んでいる。次に目指すべきキャリアパスとそのために必要なスキルを明示できない企業は、労働者から見切られる時代になった」という――。(第5回/全5回)

※本稿は、小出翔『誰もが成長し活躍する会社のしくみ』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

長期的な育成とチームワークを評価するしくみ

「スキルベース組織」で重要なのは、スキルベースの評価が、短期的な成果だけでなく、中長期的な視点での育成とチームワークの強化を促進する点です。

スキルベース組織では、新たなスキルの「習得」そのものが評価対象となります。これにより、社員は安心してリスキリングに取り組み、能力を高めていくことができます。

また、チームワークに関するスキルも明確に定義し、評価することができます。たとえば、「ナレッジ共有スキル」「他部署との連携スキル」「後輩指導(メンタリング)スキル」などを評価項目に組み込むことで、個人の成果だけでなく、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献する行動を促進できます。

かの有名な経営学者ピーター・ドラッカーは、「組織の目的は、凡人をして非凡なことをなさしめることにある」と述べました。スキルベース組織は、個人の強みを活かしつつ、チームとしての相乗効果を生み出すための基盤となります。

スマホに目を落としながら横断歩道をわたる人々
写真=iStock.com/ultramansk
※写真はイメージです

採用力と定着率の向上へ

公正で納得感のある評価・処遇と、個人の成長を支援する環境は、組織の内外に対して強力なメッセージとなります。

定着率の改善

社員が会社を辞める根底には、「この会社では正当に評価されない」「ここでは成長できない」という思いがあることが多いものです。

スキルベース組織では、自分の努力がスキルという目に見える形で蓄積され、それが公正に評価され、報酬に反映されます。そして、次に目指すべきキャリアパスと、そのために必要なスキルが明確に示されます。

これにより社員は将来への見通しを持つことができ、エンゲージメントが高まります。優秀な人材ほど、金銭的な報酬だけでなく、成長機会や自己実現を求める傾向が強いため、スキルベース組織のアプローチは、彼らを引き留める(リテンション)うえで非常に効果的です。

採用競争力の強化

採用市場における競争は激化しています。候補者が企業を選ぶ基準も変化しており、とりわけZ世代と呼ばれる若年層は、給与だけでなく、「どのようなスキルが身につくのか」「自分が成長できる環境か」を重視する傾向が顕著だといえます(*)

*リクルート「就職白書2024」データ集

スキルベース組織は、採用市場においても大きな魅力を持ちます。

「当社では、あなたの持つ○○スキルを高く評価します
「入社後、△△スキルを習得し、将来的には□□のポジションを目指していただきます」

このように、具体的なスキルを基軸として、キャリアの可能性を明確に示すことができるため、Z世代に限らず成長意欲の高い優秀な人材を引きつけることができます。また、曖昧な職務要件ではなく、具体的なスキル要件に基づいて採用を行うことで、ミスマッチを防ぐ効果も期待できます。

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