誤解3:「内視鏡検査きれいならずっと大丈夫」

大腸内視鏡検査で異常なしと言われると「もう大丈夫」と思いがちですが、これは危険な誤解です。平均リスクの人でも、内視鏡スクリーニングは一般に10年ごとが標準的ですが、これは「前回が質の高い内視鏡で異常がない、または低リスクの所見」という前提条件が満たされた上のことです。

ポリープ切除後の実施頻度は「何個」「何ミリ」「顕微鏡の検査結果」の3点で変わります。2021年の米国の推奨では、1〜2個の10mm未満の低リスク腺腫を完全切除し、かつ高品質の検査だった場合、再検査は7〜10年の幅とされています。しかし3〜4個なら3〜5年など、所見が増えるほど推奨される検査間隔は短くなります((https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2779985)。

この「検査の間隔を伸ばす/縮める」は、単に医師や検査を受ける本人の好みではなく、将来の大腸がんリスクの違いで個人ごとに異なるのです。そのため再検査を次にいつ受けたらよいかは自己判断せず、検査結果に基づいて担当医師に必ず確認してもらうとよいでしょう。

誤解4:「AIなら経験の浅い医師でも見逃しゼロ」

近年注目されているのは、人工知能(AI)の画像診断技術を応用し、医師の技術が不十分だったり疲労の蓄積だったりなどによる病変の見逃しを防ぐ技術です。すでに実用化され、大腸内視鏡検査の精度向上に貢献しています。AIが病変を検出すると通知音が鳴り、モニターに印で表示されるため、医師の見逃し回避をサポートします(「大腸がん検査で導入中! AI診断で『見逃し』は減らせるのか?」2025年10月24日、プレジデントオンライン)。

『プレジデント』2025年11/14号 特集「信じてはいけない!健康診断、医者、クスリ」
『プレジデント』2025年11/14号 特集「信じてはいけない!健康診断、医者、クスリ」

しかし、AIはあくまでバックアップ役です。ある研究報告では、大腸内視鏡検査の経験が5年以上ある医師は、AIを使うことで腺腫発見率が41%から58%まで上昇しました。一方、経験5年未満の医師では23%から32%への上昇にとどまりました。大腸の内側のひだの裏側をのぞき込むように内視鏡を動かす技術は、人間の経験と手先の感覚に依存します。最新技術のAIを使っても完璧ではないのです。

大規模研究では、内視鏡医ごとの腺腫検出率が高いほど、その後の経過で発生するがんや大腸がん死亡が低いことが示されました(Corley et al., NEJM 2014)。大腸内視鏡をやったかどうかだけでなく、質が結果に直結するのです。検査を受ける側としては、実績や体制が整った信頼できる施設を選ぶ、検査所見や病理検査結果の説明が十分か確認する、必要に応じてセカンドオピニオンの相談をする、という行動が、エビデンスに沿った賢い備えになります。