屋外の運動には大気汚染に要注意
空がかすんでいるわけでもない。注意報も出ていない。だから今日の空気は大丈夫。多くの人はそう考えます。しかし、大都市の空気問題の本当の怖さは、むしろ当たり前な現代の日常生活に潜んでいるのかもしれません。
東京、大阪、名古屋、福岡のような大都市では、PM2.5(微小粒子状物質)、二酸化窒素(NO2)、光化学オキシダントへの曝露が、特別な日だけでなく、日常生活の中に静かに入り込んでいます。
近年のそれら大都市の空気は、PM2.5は年平均で一桁後半〜10µg/m3台前半、NO2は一般環境で0.01ppm台まで下がってきています。一方、光化学オキシダントは東京・大阪・名古屋・福岡でもなお基準未達成が珍しくなく、見えにくいが残り続ける都市リスクとなっています。
通勤で歩く、駅まで急ぐ、昼休みに散歩する、夕方に軽く走るといった、ごく普通の行動のたびに、私たちは都市の空気を肺の奥まで取り込んでいます。マスクをしていない、あるいはしていても不織布一枚では、PM2.5の微細な粒子を完全には防ぎきれません。
運動自体は健康によいのはご存知の通りです。しかし注意が必要なのが、大都市の屋外で体を動かせば動かすほど、深く速く呼吸するぶん、PM2.5などを体の中に取り込む量が増えてしまう点です。
大気汚染の健康基準がより厳しく
世界保健機関(WHO)は2021年、PM2.5の指針値を以前の基準(年平均10µg/m3)と比べると、実に半分の年平均5µg/m3、24時間平均15µg/m3へ大幅に引き下げました。
「1年を通して平均するとPM2.5は5µg/m3以下が望ましい」「1日単位で見ても平均15µg/m3以下が望ましい」ということです。年平均5µg/m3以下は、慢性的に吸い続ける曝露をできるだけ低く抑える目標です。24時間平均15µg/m3以下は、一時的に濃度が上がる日もできるだけ少なくし、その日の健康影響も抑えようという目安です。WHOはこれらを、各国が法的基準を考える際の健康ベースの参照値として示しています。
大事なのは、これは「15µg/m3を1日でも超えたら直ちに危険」「5µg/m3未満なら完全に安全」という意味ではないことです。WHOの考え方は、空気汚染に明確な安全圏があるというより、低ければ低いほど健康被害は減る、というものです。そのため、5や15は「ここまで下げたい」という健康保護の目標であって、白黒を分ける絶対の数値ではありません。


