日本国内では「日本酒離れ」が続き、消費量は1970年代のピーク時から3分の1以下に落ち込んでいる。ところが今、世界では真逆のことが起きている。輸出額は5年で1.9倍に拡大し、ニューヨークで造られた日本酒が日本に逆輸出される時代が来た。獺祭は80億円を投じて米ニューヨークに醸造所を建設。2024年にはユネスコ無形文化遺産にも登録された。海外メディアが報じた「SAKEブーム」の実態とは――。
升の中に置かれたグラスに注がれた日本酒
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世界が気付き始めた日本酒の魅力

日本各地で醸造される、風味も特色も豊かな日本酒の数々。海外でも愛されており、需要は増加傾向にある。

日本酒造組合中央会が発表した日本酒輸出実績によると、2025年は過去最高となる80カ国の食卓へ届いた。2020年に約241億4000万円だった輸出総額は458億8000万円まで数字を伸ばした。5年で1.9倍に大きく成長したことになる。

金額ベースで1位の輸出先は中国(約133億円、前年比約14%増)となり、アメリカ、香港、韓国、台湾が上位を占めた。その後もシンガポール、カナダ、オーストラリア、フランス、イギリスと続き、アジア圏のみならず各方面で需要が高いことがわかる。

数量ベースの1位はアメリカ(約7720キロリットル)となった。前年比ではマイナス約3%だが、微減の範囲内と言えよう。

そのアメリカで昨年3月、日本へ向けて日本式の酒を「逆輸出」する試みが始まった。国産米使用・国内製造が条件となる日本酒に対し、海外製は「SAKE」「クラフトサケ」とのジャンルで親しまれている。

日本人気を背景に現地での醸造技術が高まれば、今後は世界各地で誕生した「SAKE」の銘酒を日本国内に居ながらにして楽しめる時代が到来しそうだ。

ニューヨーク生まれの「SAKE」

逆輸出の挑戦に出たのは、ニューヨーク・ブルックリンのクラフト醸造所「ブルックリンクラ(Brooklyn Kura)」。アメリカ産のSAKEとして初となる日本への輸出を開始した。

動向を取りあげた米地理・科学誌のナショナル ジオグラフィックによるとブルックリンクラは、淡麗辛口の「八海山」に代表される新潟の大手蔵元・八海醸造と提携。日本全国のバーやレストラン、小売店に、ブルックリン生まれの酒が並ぶことになった。

ブルックリンクラの教育ディレクター、ティモシー・サリバン氏は同誌の取材に、「日本酒をもう一度クールにしたい」と熱い思いを語る。世界最大の日本酒市場である日本の消費者に、海を越えた造り手の情熱を届けたいと、逆輸出に込めた思いを明かす。

特徴的なのは、ビール用ホップを加えたこと。クラフトサケというムーブメントの一手法として確立されつつあるが、伝統的な日本酒(清酒)の世界ではいまだ珍しい試みだ。

ブルックリンクラの銘柄「オクシデンタル(Occidental)」では、IPA(インディア・ペールエール。ホップを大量に使った、香りと苦みの豊かなビール)を思わせる香りをまとわせた。こうした自由な酒造りで、日本の若い世代を振り向かせる狙いだ。

「実際に飲んでみれば、その美味しさに驚くはずだ」と、サリバン氏は迷いなく言い切る。