千年愛された日本酒の次なる形
大手ブランドや海外の醸造所が起こした波に、日本各地の小さな蔵元も乗り始めている。
神奈川県松田町の中沢酒造。1825年創業の老舗だ。11代目の鍵和田亮専務は東京五輪を見据え、白ワインを思わせるすっきりとした味わいの「S.tokyo」を開発した。2019年、経産省所管のジェトロ(日本貿易振興機構)横浜の支援を受けてシンガポールの展示会に出展。小さな蔵にとって、世界への第一歩だった。
コロナ禍はオンライン商談で乗り切った。ジェトロによると、いまや8カ国・地域に輸出先を広げ、海外の売上を全体の約5%にまで伸ばした。蔵を訪れる外国人も増え、英語対応も強化している。鍵和田氏が次に見据えるのは、いまの倍となる海外比率10%だ。
政策面でも後押しを受けている。農林水産省は「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」で日本酒を輸出重点品目に指定し、2030年までに輸出総額760億円を目標に掲げる。
海を越えた先で、日本の酒の魅力を伝える、伝統に新たな息吹を与える酒造メーカーたち。やがてその情熱は日本への逆輸出という形で国内にも届きはじめた。
世界に広がり始めたSAKEのうねり。古来日本人が愛した酒の、その次の千年の未来が花開こうとしている。


