がんにならないためには、どんなことに気を付ければいいのか。大阪公立大学病院がんセンター長の川口知哉教授は「塩分や糖分の多い食品を過度に摂取すると、大腸がんや胃がんのリスクが高まる。いまから食事を工夫することが大切だ」という――。(第1回)

※本稿は、川口知哉『「がん活」のすすめ 科学と名言でつくる「がんを寄せつけない習慣」』(ブルーバックス)の一部を再編集したものです

生肉の詰め合わせ
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がんを防ぐ「食のパターン」

私たちは毎日の食事によって体をつくり、また、心を養っている。何を食べるか、どのように食べるかは、人生の質を決定するほど大切なことである。食べることは習慣であり、文化であり、また、健康の基盤である。

そして、がんを含む多くの病気は、日々の食生活と深く関わっている。ここで言う「食事」とは、単発の一皿ではなく、何年にもわたって繰り返される「食のパターン」の総和である。

単一の食品というより、総摂取量・組み合わせ・調理法・食べる速度やタイミングまでが重なり合って、内臓脂肪、ホルモン、腸内細菌、炎症、酸化ストレスに変化を与えていく可能性がある。その微差の蓄積が、将来のがんリスクの有意な差となって現れる。「食事」こそ、「がん活」で忘れてはならない実践項目だ。

食事を薬とし、薬を食事とせよ。
――ヒポクラテス

古代ギリシャの医師ヒポクラテスは「食事こそ薬である」と説いたが、この考えは2500年を経た現代でも色あせていない。実際、最新の科学は、私たちが食べるものが、体の働きや病気のなりやすさに深く関わっていることを示しつつある。

食べたものは単にエネルギー源になるだけでなく、肝臓や筋肉、免疫細胞などにさまざまなシグナルを送り、遺伝子の働き方に影響を及ぼすことがわかってきた。さらに腸内細菌が食べ物を分解してつくる短鎖脂肪酸などの物質は、全身の炎症や代謝を微妙に調整していると考えられる。

こうしてみると食べることとは、単なる栄養摂取ではなく、代謝や免疫を通して自分の体と静かに対話している行為と捉えることもできるだろう。